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その後、再びローガンからドレスや花などが贈られてきたが、義務的な行動だろうと思うと、なんとも言えない気分になる。
フレイヤが「不便はしておりませんので、これ以上のお気遣いは心苦しく思います」という旨をやんわりとしたためた手紙を送ると、それ以後は申し訳程度に時折花だけが届けられるようになった。
手紙どころかカードすらもついていないので、美しい花に罪はないのに、余計に憂鬱になるフレイヤであった。
◇◇◇
結局、結婚の日を迎えるまでにローガンと顔を合わせたのは、あの一度きりだ。
これでいいのだろうかと散々悩んだ数ヶ月だったが、こうして、婚礼の儀を前により一層険しい顔をしているローガンを見ると、会わなくてよかったのだと思えてくる。
顔を合わせるたびに睨むように見られては、心が擦り減ってしまって、もっと憂鬱な気分で今日を迎えていただろう。
──相手が好きな人だからこそ、なおさら。
「フレイヤ、手を」
「……はい」
大きな彼の手に自分の手をそっと乗せ、教会へゆっくり歩き始める。
教会の中では、見届人の主教が柔和な笑みでフレイヤとローガンを迎え、婚姻宣誓の儀式が始まった。
「汝、ローガン・アデルブライトは、フレイヤ・レイヴァーンを妻とし、生涯慈しみ、添い遂げることを宣誓しますか」
「……はい。この名にかけて誓います」
低い声が、ゆっくりと静かに言葉を紡ぐ。
「汝、フレイヤ・レイヴァーンは、ローガン・アデルブライトを夫とし、生涯慈しみ、添い遂げることを宣誓しますか」
「……はい、誓います」
誓文にサインをし終えたところで、主教がそれを高く掲げ、参列した人々に告げた。
「宣誓は今ここに成されました」
湧き起こる拍手の中、フレイヤはこれから始まる結婚生活への不安を胸に、ぎこちなく微笑んだ。
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