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八、新たな日々
──澄み切った青空の下、教会への道のりを、一台の馬車が進む。
薄青と薄紫の花が飾り付けられた馬車の客室では、純白のドレスを身にまとった年若き令嬢が、純白の騎士服を身にまとった青年に寄り添い、幸せな微笑みを浮かべていた。
しばらくして馬車は止まり、教会の鐘が軽やかに鳴り響くなか、ゆっくりと扉が開かれる。
「フレイヤ、手を」
「はい、ローガン様」
一足先に降りたローガンが差し出した手を取り、フレイヤは一歩を踏み出した。
主教が待つ教会の中へと、ゆっくり、二人は歩調を合わせて進んでゆく。
──今日は、新たな出発の日。
余計な気を遣わず、水入らずで過ごしたいと願い、教会には夫婦と主教しかいない。
婚礼の儀のやり直しという無茶を、深く理由を尋ねることなく了承してくれたという主教は、柔和な笑みで二人を迎えた。
「今のあなた方に、形式通りの誓いでは不足があるでしょう。私はお二人の誓いをしかと聞き届け、見届けます。どうぞ、思うように宣誓を」
宣誓の定型文とはまったく違う言葉をかけられて、フレイヤとローガンは顔を見合わせる。
やがてローガンは、フレイヤの両手をそっと取り、包むように優しく握った。
「私、ローガン・アデルブライトは……フレイヤ、君をこれから先もずっと愛し、慈しみ、守り抜くと誓おう。そして、君から一番に頼りにされ、同じ想いを返してもらえるように、努力を怠らない。だからどうか、この先の人生を、俺とともに過ごしてほしい。君を幸せにするのは、いつだって俺でありたい……この我儘を受け入れてくれるだろうか」
「はい……!」
何度も深く頷いたフレイヤは、ローガンの手を握り返す。
「私、フレイヤ・アデルブライトは……ローガン様、あなたのことがずっとずっと大好きで、これから先もずーっと愛する自信があります。いつだってあなたの無事を願い、あなたが帰る場所となることを誓いましょう。あなたがそばにいて私を慈しんでくださるなら、私はそれだけで幸せです。どうか末永く、私とともに歩んでください」
「ああ……もちろんだ」
「宣誓は、今ここに成されました!」
主教が高らかに宣言すると、二人を祝福するように鐘の音が鳴った。
改めて夫婦としての誓いを立てたフレイヤとローガンは、教会を出て、青空の下へと歩んでゆく。
「フレイヤ」
「はい、……ん!」
返事をした途端、ローガンは優しい口づけを落とす。
その表情は、穏やかで優しく──口元には、幸せを隠しきれない微笑みが浮かんでいた。
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