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婚礼という節目のやり直しを経たことで、改めてはっきりと、夫婦となった実感が湧いてくる。
しかも、思いが通じ合っていることをお互いに認識しているので、喜びもひとしおだ。
アデルブライト家の別邸に帰った二人は、お互いの晴れ姿をもっと見ていたいと合意し、花々が咲き誇る庭園でお茶を楽しむことにした。
侍女たちはお茶の準備を終えると、心得ているとばかりに下がり、代わりに呼び鈴がテーブルの上に置かれる。
二人きりになった庭園で、フレイヤはうっとりと隣に座るローガンを見つめた。
「儀礼用の騎士服もよくお似合いですね。ローガン様の精悍な美が際立って、とても素敵です」
ローガンは唇をむっと引き結ぶけれど、これは緩みそうになる口元を抑えようとしてのものだろうから気にしない。
「フレイヤも……今日はいつにも増して美しい。可憐だ」
仏頂面のまま、声音だけは実に柔らかく告げられて、フレイヤは幸せな気持ちで微笑む。
そして、ローガンの方へと少し距離を詰め、肩にそっと頭をもたれさせた。
「なんだか夢のようです。ローガン様に想われ、こうして寄り添い穏やかな時間を共に過ごせたらと……叶わぬ願いだとはわかっていても、密かに夢見ていたものですから」
フレイヤがしみじみと呟くと、ローガンがその手を取り、しっかりと握りしめる。
「そのように思っていてくれたことが、俺にとっては夢のようだ」
力強い中にも噛みしめるような響きがある声だった。ローガンの表情が気になって顔を見上げたフレイヤは、眉間に深い皺を刻んでいる彼を見てくすくす笑ってしまう。
「皺ができていますよ」
眉間をつんつんと軽くつつくと、ローガンの顔から力が抜けて、柔らかな微笑みが現れる。
婚約以降、この仏頂面癖には大いに振り回されたわけだが、今となってはローガンの意外と不器用なところや、笑うと優しげなところを一度に楽しめて悪くないと思うフレイヤであった。
「すまない……。顔についてはなかなか直せないが、他で補えるように努める。フレイヤも、俺の顔のことで何か気になることや不満に思うことがあれば、遠慮せずに教えてほしい」
『顔』と言うより『表情』では、と思いつつも、フレイヤは頷いて応えた。
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