八、新たな日々

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 ゆっくりと丁寧に降ろされて、髪を優しく撫でられる。その動き一つ一つから、大事にされていることが伝わってきて、フレイヤは幸福を噛みしめるように目を細めた。  両腕を広げてローガンの方へ伸ばすと、口角をわずかに上げた彼がその中へ収まり、強く抱きしめてくる。  薄い夜着越しにお互いの体温がじんわりと伝わり、混じり合って、ドキドキするのに穏やかな気持ちにもなれるのが不思議だ。  口づけが瞼に落とされ、瞼を閉じているうちに唇が重なる。  軽くついばむように、角度を変えつつ何度か繰り返されたキスのあとで、熱い舌が唇を割って入ってきた。 「ん……!」  まだ慣れない深い口づけに、フレイヤはびくっと肩を跳ねさせてしまう。それをなだめるようにローガンの大きな手が髪や背中を撫で、力が抜けた隙にますます口づけは熱く激しくなっていく。  よくわからないながらも、フレイヤも応えるように少し絡め返してみる。ローガンの動きが少し止まったあとに、あちこちの反応を探るように舌先で撫でられ、ぞくぞくとした感覚が背筋を駆け上った。 「……っふ、は……」  唇が離れ、フレイヤは少し乱れた息を整えようと浅い呼吸を繰り返す。  気づくと、その間に夜着を前で留めていた紐が解かれて、胸元から素肌が露わになりつつあるところだった。  思わずひゃっと息を呑みそうになるが、すべてをいきなり脱がされはせず、そのままの状態で鎖骨から胸元へと布越しにローガンの手が降りていく。  膨らみのところで止まったその手は、フレイヤの胸をまるっと包むように優しく触れた。 (ああ……痛いことなんて何もないわ。こんなに優しく、丁寧に触れてくださるのですもの)  フレイヤがほっと息をついた時だった。少しずつローガンの手に力が入っていき、ほとんど触れるだけだった状態から、そっと揉むような動きへと変わる。  さらには、胸の頂あたりを親指がゆるゆると掠めて、なんとも言えない感覚にフレイヤは唇を噛んだ。 「……痛むか?」  唇を噛んだことで、耐えていると思われたらしい。フレイヤは慌てて首を横に振った。 「いえ……なんだか変な感じがして……」  口にしつつ、もしかしてこれが『気持ちいい』に近い感覚なのだろうかと、フレイヤは推察する。それは正解だったようで、ローガンは「そうか」と言って、ふっと安心したように表情を緩めた。
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