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ミッション1
画面をタップするとミッションの内容が出てきた。
「ポッック? って何よ」
「ポミックとはネットワークの中に住む住民です。普段は特に問題なくネットの世界を生きているのですが、ウイルスに感染すると悪さをする様になってしまうのです」
「ネット……ウイルス……」
姿を消したペリコロだが、声だけが聞こえた。
小学校でも多少はコンピュータを使う時の注意などの授業を受けていたナキリは、なんとなくだがペリコロの説明を理解することができた。
画面を見続けていると、カードの下に文字が表示され、「場所はもう一枚のカードに示す」と出ている。ナキリは表示通りにもう一度画面をタップするとカードがめくれ次のカードが表示された。
(これってもしかして謎解き?)
表示されたのは今流行りの謎解き問題のようだった。流行り物にはすぐに飛びつくナキリだが、こういう頭を使うものは苦手だった。最近では謎解きを取り扱うテレビ番組も増えてきていたがスルーしてきていた。
弟のソウタは楽しそうに観ているがナキリは全く興味が出なかったため、観ることはほとんどなかった。
仮にこの答えがわかりその場所に向かったとして、敵をどうやって倒せばいいのだろうか。自分が死ぬことはないと言っていたが柔道部や剣道部などの武道を嗜んでいないナキリに敵を倒す方法などなかった。
少し考えたナキリだが、答えがさっぱりわからなかった。場所ということはあけぼの町のどこかなのは確かだろうがそれ以外さっぱりだった。
手当たり次第に探すという手もあるがせっかくの日曜日の午後にそんなことしたくなかったナキリは、悔しいが弟の方が得意だろうと思い、嫌ではあるがとりあえず聞いてみようと重い腰を上げた。
「どちらへ?」
「弟に聞くの、こういうの好きだから」
ナキリの言葉にペリコロは急に顔面ドアップで画面に現れる。
「いけません! これはナキリ様だけに与えられたミッション! 他人の助けはルール違反です」
「えー! じゃあ無理よこんな問題」
「まだ一分も考えていないじゃないですか、時間もまだありますし……」
時間というのはおそらく画面の右下に表示されている残り三時間という数字のことだろう。
現在は午後の二時。つまりタイムリミットは今日の午後五時ということだ。
しかし、ナキリにとって時間などなんの意味もなかった。例え残り時間が一日あろうご一週間あろうが考えても解けないだろう。
「無理! 考えるだけ時間の無駄」
「そんな……諦めるの早くないですか?!」
「人生諦めが肝心っていうでしょ、私の座右の銘よ」
「なんですかそのネガティブな座右の銘は……」
「いいでしょ私の勝手、無理なものは無理なの!」
「ちょっ! だめですよ、電源お、と──」
しつこいペリコロに嫌気がしたナキリはポケホを強制終了させた。どうやら乗っ取られていたわけではなかったようで安心する。
死人が出るかもしれないなんて言っていたがどうせゲームに参加させるための脅しだろう。ナキリにはさっきまでの恐怖心なんてもうどこかへ飛んでいた。
ナキリはポケホを机の上に投げるように置き、またダラダラと漫画を読み始めた。
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