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『はるちゃん』の話によると、
その結婚を約束していた幼馴染は高校卒業後にレスキュー隊員になったけど、
災害に巻き込まれた人を救助している最中に亡くなってしまったらしい。
その人は死に際、周囲にいた人たちに対して
婚約者にこう伝えて欲しい、と言い遺していた。
「はるちゃん——ハルナ。
俺が死んだら、今と同じ姿で生まれ変わって、はるちゃんのところに会いに行く。
どうか寂しがらないで」
その生まれ変わりというのが俺のことらしい。
半信半疑だったけれど、
『はるちゃん』はその人の写真を見せてくれて、
確かにそこに写っていたのは俺そっくりの人物だった。
それから数年が経ち——
俺と『はるちゃん』は結婚した。
かなりの歳の差だったし、周囲には色々言われたけど俺は気にならなかった。
俺は自分の前世の記憶はないし、紆余曲折もあったものの
『はるちゃん』を無視して他の誰かと一緒になることもできなかった。
それでも二人での生活が始まると
毎日笑いが絶えなくて、歳の差なんて感じないくらい話も合って、
ああ本当に俺は前世でもこの人と恋人だったんだろうなと実感した。
そんな『はるちゃん』との幸せな結婚生活は、長くは続かなかった。
まだ40になるかどうかの若さで病気が見つかった『はるちゃん』は
そのまま入院して、あっという間に症状が悪化して行った。
いよいよの時が迫ってきた時、
病院のベッドの上で『はるちゃん』が言った。
「長く一緒にいられなくてごめんね……」
「何言ってるんだよ。
俺が小さい頃から、もうずっと側にいてくれたじゃん」
「それでも、あなたが歳を取っておじいちゃんになる姿を見届けたかった……。
——だから、今度は私があなたに会いに行くね……」
『はるちゃん』は、その日のうちに亡くなった。
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