まほろばのあなた

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それから10年程が経ち—— 「おじちゃん、助けてくれてありがとう!」 小学生くらいの女の子が、そう言って微笑んだ。 「道に迷って困っていたの。 おじちゃんが送ってくれなかったら、私おうちに帰れなかった!」 「この辺りは迷いやすいからね。 おじちゃんも、君くらいの歳の頃にここで迷子になったんだ」 「おじちゃんも?!そっかぁ……。 おじちゃんはその時、ちゃんと家に帰れた?」 「ああ。助けてくれた人が居たからね」 俺が微笑んでみせると、女の子は笑顔で手を振りながら家の中に去って行った。 ——さあ、ここから俺たちはどうなるかな。 思春期になったら 「おっさんのくせにストーカーするのはやめてよ!」 なんて煙たがられるだろうか。 彼氏が出来たらちょっと距離を置こう。 『はるちゃん』そっくりの容姿を持つこの子と 俺が将来どうにかなるとは限らないけれど、 それでも——俺はこの子を見守り続けたい。 俺の前世や、『はるちゃん』の想いを引き継いでいけるのは、 今は俺にしかできないことだから。 『はるちゃん』が、俺が安心して生きられる場所を作ってくれたように 俺もこの子にとって、まほろばのような場所でありたい。
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