小犬の小犬丸

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小犬の小犬丸

僕は小犬丸 紅葉(こいぬまる もみじ)、高校2年生の春、始業式で大きな欠伸をして、目を開けたら見慣れない場所にいた。 「……?ベッド?」 大きくてふっかふかで寝心地いいベッド。くあー、と大きく欠伸をしてまたベッドに丸まった。ウトウトとしていると突然扉がノックされた。 「お坊ちゃま、失礼致します」 「……?誰?」 「エミリアでございます」 「うん……?」 エミリア?外人さん?ベッドから起き上がって扉を開けた。 「あ、メイドさん……?」 「はい、学校へ行かれる時間です。そろそろ身支度を。」 「うん、分かった」 学校あるんだ……。てかここ異世界?さっきのメイドさんふわふわの耳はえてたよね?僕ってばなんで焦らないんだ?不思議に思いながらもメイドさんがスカートの裾を持ち上げて頭を下げるのを見た。 「……どうして頭下げるの?」 「どうして?お坊ちゃまはキリリア家のお坊ちゃまですから」 「キリリア家……?そっか?分かった」 よく分からないけれどきっと貴族か何かなんだよね?その後は着替えを手伝うと言われたけどさすがに断った。綺麗な人に下着姿見られるなんてヤだし。クローゼットを開けて、制服らしきものに着替えた。うん、いい感じ。姿鏡があったから何となく見てみた。顔はまんまで、髪はふわふわの薄黄色、上には耳が付いていて、触れるとぴくぴくと動く。目はオレンジっぽい。しっぽももふもふ。ポメラニアン?……って自分眺めてたら遅刻する!ふわふわの髪を整えて家を出た。ご飯は食べなかった。だってなんか彩りがなくて全体的に茶色かったんだもん。 家を出ると直ぐにじいやと呼ばれてそうな人が走ってきた。きっとこの肌黒さはドーベルマンだ。 「どうしました?」 言うと、目を白黒させた。 「何故敬語ですか?」 「……なんとなく?」 初対面だし!とは言えない。だってみんな僕を知ってるみたいだし。 「それよりもリムジンに乗っていかれないのですか?」 「リムジン?!乗りたい乗りた!!」 思わずはしゃいだらまた目を丸くした。 「……頭打たれました?」 「失礼な。普通だよ」 だってリムジンなんか乗ったことないしなぁ……。ワクワクしながら扉を開けてもらって後部座席に座る。 エンジンがかかって、車が動き出す。見慣れない建物や景色を見つめながら着くのを待った。 「あんまりガタガタしないんだね」 「当たり前です。モミジ様を安全にお届けするのが私の役目ですから」 「そっか」 そうなの?とは言えない。だって家の人なのに知らないのは変でしょ? 僕小犬丸紅葉じゃなくなっちゃったのか……なんだっけ、モミジ・キリリア?なんかアニメとか外国の名前みたい。不思議な気持ちになりながらも気づけば学校の前。外から扉を開けられて、車を降りた。「行ってらっしゃいませ」と執事ポーズで頭を下げられる。すっごく大きい学校でびっくりした。大きな門をくぐって、下駄箱のところに行く。僕の名前は……これかな。校内用の上履きに履き替えたところでふと、思った。僕の学年とクラスってどこ?
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