優しい モミジside

1/1
89人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

優しい モミジside

僕はジェリックに腕を引かれて、滅多に人のこない教室へ連れていかれた。 中に入ると、鍵を締められた。 「……モミジはどうしてそんなに気づかないんだ?」 「レオン兄様にマーキングされて、その上項を舐めさせるなんて……モミジはどうかしてる!」 マーキング?いつされたの?そもそも僕は元人間。マーキングなんかしないからやり方なんて知らない。今の僕は獣人だから「どうやってやるの?」なんて聞けない。 「……ごめんなさい、僕気づきませんでした」 ペコリと頭を下げる。 「っ……全く。モミジは鈍感すぎる。私が守らねば……」 はぁ……とため息をついて、脆いおもちゃを抱きしめるようにそっと僕を抱きしめた。大きな体に人肌。子守唄のように一定のリズムでドクドク鳴る心臓。心地よくてうっとりと目を閉じた。 ──────────── ───── ─── 重い瞼を上げると、空は朱色に染まっていた。もう夕方か、家に帰らなきゃ。 先程、” 守る ” と言っていたジェリックは帰ってしまったみたいで、口だけか。と苦笑してしまう。レオン帰っちゃったかな。 ぽやぽやした頭で目を擦る。空き部屋を出て、廊下をフラフラ歩く。 「れおん……どこ?」 誰もいない静かな廊下は少し寂しい。俯いていると、ドンッと誰かにぶつかった。 「ってぇな……」 「すみませ……ってレオン?」 ぶつかった鼻を抑えて見上げる。 「あ?……あぁ、モミジか」 「レオン、探してたんだよ」 言いながら隣に並んで廊下を歩き出した。 「?何故だ」 「ジェリックに放って行かれて寂しかったんだよ。ついさっきまで守るとか言ってたのにね」 おかしくてクスクス笑っていると、レオンの喉からグルルと低い唸り声が聞こえた。 「レオン……?」 顔を見ると、少し牙を出して眉間に皺を寄せていた。 「ちっ、大切にするんじゃねぇのかよ……」 「レオン?」 もう一度声をかけると、ハッとして困ったように言った。 「アイツは口だけだ。あんまり関わるな」 「うん?分かった。」 僕のふわふわの髪をぐしゃぐしゃにした。 「行くぞ」 「うん!あ、帰りにアイス食べたい」 「車来るだろ」 「……ダメ?」 見上げて必死にお願いしてみた。今日は暑いから許して? 「ッ〜〜!!……仕方ねぇな。車来るまでだ」 フイッと顔を逸らして照れくさそうに頬をかいた。それから直ぐに頷いてくれた。レオンはやっぱり優しい。 「ありがとう!」 ニコッと微笑んで、レオンの大きな手を引いて小さなアイス屋さんに向かった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!