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優しい モミジside
僕はジェリックに腕を引かれて、滅多に人のこない教室へ連れていかれた。
中に入ると、鍵を締められた。
「……モミジはどうしてそんなに気づかないんだ?」
「レオン兄様にマーキングされて、その上項を舐めさせるなんて……モミジはどうかしてる!」
マーキング?いつされたの?そもそも僕は元人間。マーキングなんかしないからやり方なんて知らない。今の僕は獣人だから「どうやってやるの?」なんて聞けない。
「……ごめんなさい、僕気づきませんでした」
ペコリと頭を下げる。
「っ……全く。モミジは鈍感すぎる。私が守らねば……」
はぁ……とため息をついて、脆いおもちゃを抱きしめるようにそっと僕を抱きしめた。大きな体に人肌。子守唄のように一定のリズムでドクドク鳴る心臓。心地よくてうっとりと目を閉じた。
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重い瞼を上げると、空は朱色に染まっていた。もう夕方か、家に帰らなきゃ。
先程、” 守る ” と言っていたジェリックは帰ってしまったみたいで、口だけか。と苦笑してしまう。レオン帰っちゃったかな。
ぽやぽやした頭で目を擦る。空き部屋を出て、廊下をフラフラ歩く。
「れおん……どこ?」
誰もいない静かな廊下は少し寂しい。俯いていると、ドンッと誰かにぶつかった。
「ってぇな……」
「すみませ……ってレオン?」
ぶつかった鼻を抑えて見上げる。
「あ?……あぁ、モミジか」
「レオン、探してたんだよ」
言いながら隣に並んで廊下を歩き出した。
「?何故だ」
「ジェリックに放って行かれて寂しかったんだよ。ついさっきまで守るとか言ってたのにね」
おかしくてクスクス笑っていると、レオンの喉からグルルと低い唸り声が聞こえた。
「レオン……?」
顔を見ると、少し牙を出して眉間に皺を寄せていた。
「ちっ、大切にするんじゃねぇのかよ……」
「レオン?」
もう一度声をかけると、ハッとして困ったように言った。
「アイツは口だけだ。あんまり関わるな」
「うん?分かった。」
僕のふわふわの髪をぐしゃぐしゃにした。
「行くぞ」
「うん!あ、帰りにアイス食べたい」
「車来るだろ」
「……ダメ?」
見上げて必死にお願いしてみた。今日は暑いから許して?
「ッ〜〜!!……仕方ねぇな。車来るまでだ」
フイッと顔を逸らして照れくさそうに頬をかいた。それから直ぐに頷いてくれた。レオンはやっぱり優しい。
「ありがとう!」
ニコッと微笑んで、レオンの大きな手を引いて小さなアイス屋さんに向かった。
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