「ありきたりなプロポーズ」

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「ありきたりなプロポーズ」

 いつものことだけど、何回その「いつも」を繰り返してきただろう。  これからもこうして続いていけばいいなあ、なんて考えながら、彼女が話す言葉に相槌を返したりなんかする。  「そ。ケーキかなんか売ってないかな」 「真夜中だし品切れかも」 「なんも用意してないんだよね」 「なにを?」 「私、プレゼントとか」 「別になんもいらねえよ」   とくに誕生日を意識して過ごしていたわけではなかったけれど、いざ後24時間程度で誕生日前日が終わると思うと、急に「イベントを楽しめば良かった」なんて気持ちが出てきたのだろうか。  彼女が俺に何かをプレゼントしてくれるなんて考えてもいなかったし、俺だって別にいつも何も用意してねえし。  なんも気にしなくていいのに。  まあでもせめてケーキくらい食えば良かったか?  「ま、いっか」 「じゃあ来年なんかくれよ。俺も用意するから」 「来年?」 「そ。来年」   彼女が俺の顔を見ると、少し驚いたような表情をした気がした。  そんな、来年の話。  来年のお互いの誕生日もきっと一緒にいるだろ、って、そう俺は思ってるよ、って伝えたかった。  大丈夫だ、来年だ。  今年の誕生日、お互いがお互いに特に何もプレゼントを用意しなかったし、ケーキなんかを食ったりもしなかった。  それを彼女が微妙に気にしている風だった。  そう、だから来年だ。  なんとなく、来年も絶対一緒にいような、とはどうしてだか怖くて言えなくて。  そんな臆病もんの俺は、かわりに来年の約束をした。  どこか、祈るような気持ちを隠して。  「…わかった」 「楽しみにしてっから」 「私も」   彼女は俺の顔を見ていなかったけれど、ポツンと呟くその姿はなんとなく嬉しそうだと思えて安心した。 彼女が喜ぶもんを、次の一年間で見つけようと思うと、本当に楽しみになってきた。  なんだか無性にはやくこいつに直接触れたい、と言う気持ちが大きくなって、コンビニに向かう歩みが自然と速くなる。  それでも彼女も同じスピードで隣に並んでついて来ていると言うことは、きっと同じ気持ちなんだろうなと思えて、もういっそダッシュしてしまいたくなった。  さすがにゴムが欲しすぎてコンビニにダッシュするのはバカみてえだなと思ったけど、でももうなんかすっげえこいつのことすきなんだけどって感じの気持ちがわいてきた。  一刻も早くこいつにめちゃくちゃ触りてえし、たくさん抱きしめたい、なんて、ありきたりな気持ちを心に抱く。  
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