「ありきたりなプロポーズ」

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「ありきたりなプロポーズ」

 さっきまでは部屋でふたり、ベッドに転がってゴロゴロしてて、こいつってなんてあったけえんだろうって思ってたのに、なんだかちょっとだけ寂しい気分だ。  寝っ転がってスマホいじってた俺の上に珍しく自分から乗っかってきて、甘えたように首筋に額を埋めてきて猫みたいにすり寄って来た。  これは本当に珍しくて、マジで滅多にないことで、おまえどうしちゃったの?と俺は嬉しい反面、同時に不安にもなった。  え、俺まさかこれから振られんの?もしくは何か疑われるようなことでもしたっけ?不安にさせるようなことしたか?まさか最後に、今までありがとうね、って言われちまうの?って。  でもまあそんなことはなくて、俺の肩口にカプリと嚙みついたかと思うと、顔をあげて俺を見て、はにかんだような笑顔を浮かべると「今年も一年お疲れさま」と言ってきた。  お疲れさま、は、ありがとう、って意味だろう、多分。  彼女は本当にわかりにくいから、そんなわかりにくい自分に愛想尽かさずに今年も一年付き合ってくれてありがとう、ってそう言いたいんだろう、って俺は勝手に解釈した。  だから俺も「こっちこそ、ありがと」って言って頬に手のひらをあてて、優しく撫でた。
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