「ありきたりなプロポーズ」

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「ありきたりなプロポーズ」

 そんな状態だった俺は、コンビニにつくと恥も外聞も捨てて速攻でゴムのある棚に向かった。そこで、俺は固まった。  彼女はコンビニについた時に、一応ケーキ見てくる、と言って食品コーナーに行ったので、少し遅れて俺のところに来た。  彼女は立ち尽くす俺を訝し気に見てから、ゆっくりと商品棚に目をやる。  そんで、ああ、とそれだけ言葉を吐いた。  ああ、じゃねえよ。  ああ、どころの話かよ。  俺にとっちゃ大問題なんだけど、彼女にとってはそんなに問題じゃねえってことなのか。  そんなわけねえよな。  今日誘ってきたのは彼女だし、さっきまでは多分お互い早くセックスしてえなあって気持ちだった、って俺は信じてるよ。  なのに、ああ、って。  「仕方ないよ」 「仕方ないの!?」 「だって真夜中じゃん」 「イベントごとでもねえのに、こんなことあんの!?」 「ここ、コンビニ少ないし、みんな夜にもなれば考えること同じなんじゃない」 「買っとかなかった俺のバカ!!」   わざわざ真夜中に早歩きでやって来たのはいいものの、いつもゴムが並んでいる棚にはそいつの姿はなかった。売り切れってあり得る??世の中の恋人たち、もしくはナンパでもいい一晩だけでもなんて言う輩が、みんなこのコンビニに群がったのかよ。  俺、コンビニでゴムが売り切れてんのはじめて見たわ、と茫然とする。  つまり今日は出来ません、ってことになるんだろ?  そんなのありなの?  誕生日なんですけど?  さっき来年も一緒にいてえなあみたいな話しちまって、心もほこほこあったかくなって、もうはやく裸で繋がって強く抱きしめてえなあなんて思ってたんですけど、ダメになっちまうの??  「いいよ別に」 「よくないだろ、俺はよくない」 「いや、そういう意味じゃなくて」 「だってねえんだけど」 「だからさ」   俺の悲痛な声に返事を返す彼女の声がどんどん小さくなって行く。  いいよ別に、って、「私から誘ったけど、別に今日はセックスしなくてもいいよ」って意味だろ?  それは俺がよくないんだよ。  
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