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「ありきたりなプロポーズ」
そしたら彼女が俺の耳たぶをひっぱって自分の口元に持って行くもんだから、よろけつつもいくら客が誰もいねえコンビニだからってさすがに店員はいんだろ!って俺は焦る。
でも、そんな俺のことはお構いなしと言うように、彼女はいつものゴム買う時みたいに何にも気にしてませんって顔で、男らしく潔くこう言い切った。
「別に生でいいよ、今日」
そんで今度は俺の頭がボン!って爆発した。赤面どころじゃなかった。
そんな俺の様子を見ると、彼女は俺の耳たぶから手をはなし、クスクス、っと面白そうに笑った。
俺、そんなに変な顔してたんだろうか。
あまりに驚いてしまって微動だにできなかった俺の背中を、彼女がバシっと軽く叩いて「ケーキなかったよ。はやくかえろ」と声をかけて来た。
はやくかえろ、が、はやくセックスしよう、って意味に聞こえて、また俺は頭の中でだけ悶え苦しんだ。
こいつ、どうしてこんなに俺の心乱すのうまいんだよ。
だから俺は彼女から離れらんねえんだよ。
もう、こいつのこういうとこ、たまんなくって癖になっちまってる。
ほんと爆弾おとしてくんだよな、いつもいつも。マジ心臓に悪い。マジそういうとこだいすき。
愛してるってこういう気持ち?
そんな俺も大概だなと思いつつ、先に歩き出した彼女の後ろについて行く。
コンビニを出たところでちょうど横に並ぶと、彼女がまだ可笑しそうに笑っているのを見て、こいついつまで笑ってやがんだよって悔しいのに、やっぱなんか勝てねえんだよなあって気持ちになる。
仕返しにもなりゃしないけどさ。
せめてこのくらいの悪戯はいいだろ。
俺は、彼女の額にちょいっと唇をくっつけて軽いキスをした。
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