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扉が開かれると、モートリーニ伯爵と腕を組みながら入場するペリー二令嬢の姿が見えます。
薄めの赤色のドレスを纏いっている令嬢はとても可愛らしく、今夜の主役に相応しい出で立ちでした。その場にいた誰もが、「こんなに可愛らしい女性を隠していたのか」と隣に並ぶ伯爵に視線が送られます。
さすがの陛下も、少し驚いたようでした。
「ほう……」と小さく漏らして二人へ向き直ります。
そして、そんな二人を一際微笑ましく笑顔で見つめるのが長男のトルドー・モートリーニです。彼はペリー二のことをとても可愛がっており、今日という日を心待ちにしていました。
どうです?あれが妹なんですよ、と得意気に周囲に自慢しています。
二人が一歩一歩とレッドカーペットを歩く様を周りの者たちは熱心に見つめます。また絵になる美しさだ…と溜め息が漏れ聞こえてくるようです。
そんな、人々の熱い視線の中に、一際冷たい視線が混じっています。
皇妃は上から下まで視線で一瞥をくれたあと、無邪気にレッドカーペットを進めるその女性から目を逸らしました。
皇妃とはいえ、彼女も側室です。もう二度と陛下と並んで歩くことはないそのカーペットを、未来に希望を持った目で進むペリー二のことを疎ましく思うのも仕方がないことです。
私はそんな皇妃のことを見つめましたが、彼女は顔を前方に向けることはありませんでした。
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