6人が本棚に入れています
本棚に追加
側室の任命式は、いくら夫婦の契りを交わすとはいえ、流石に司祭を呼んだりすることはありません。皆の前で、皇帝が指輪を贈ることで正式に任命されたと見なされます。
陛下とペリー二令嬢がお互いに向き合い、陛下が胸ポケットから指環を取り出しました。
ペリー二の髪色によく似たピンクトパーズの指輪です。ペリー二にはこの指輪がどれほど価値があるものなのかは分かりませんが、この帝国一の男が自分に贈り物をした、という事実に胸が踊ります。
そして無邪気な瞳でこう誓うのです。
「必ず、貴方の隣に正式に立ってみせますわ」
そんなことも露知らずな皇帝陛下は、少し微笑んで宣言します。
「ここに、ペリー二・モートリーニを私の第7夫人に任命する」
会場中が拍手に包まれ、この宣言を祝い称えます。
この時ばかりは伯爵も一人の父親の顔でした。そして、少し天を見上げ、子どもたちを残していった最愛の女性と心を通わせるのです。
私ももちろん、このめでたい瞬間に手を叩きます。私にとって良い瞬間では無いものの、素晴らしい空間で祝いの場が設けられていることは祝福せずにはいられません。
私が二人を眺めていると、ペリー二令嬢と目が合いました。私を見たのか、私の座る席を見たのか、はたまた皇族だけに許されているダイヤモンドの王冠を見たのか、定かではありませんでしたが、かなり好戦的な眼差しとぶつかりました。
口角を少し上げて笑うペリー二の表情に気づいたのは、恐らくこの会場の中で、私と皇妃だけだったでしょう。
最初のコメントを投稿しよう!