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ペリー二は余りのことに口をあんぐりと開けて驚きました。
「?寝ないのか?」
ペリー二は自分の魅力を理解しています。この世の中に存在する全ての褒め言葉が自分を表していると信じて止みません。ですから、自分を目の前にして恥ずかしくて目線を逸らす男性や、声をかける勇気がない男性がいることは分かります。とはいえ、相手はこの国の皇帝です。よく見てもペリー二のことを緊張のあまり直視できない、というわけでは無さそうです。
この男…本当に男なの?この国に跡継ぎがいないのは皇帝のせいでは?と次から次へと疑問が湧いてきます。
「陛下!!本当にこのまま寝られるおつもりですか?」
「ああ。疲れているだろう」
「今日は初夜ですよ?」
「初夜とはいえ、無理する必要はない。身体が大事でしょう」
「いいえ!疲れていません!!!先程入浴してすっかりリラックスしましたわ」
「そうですか、それは良かった。では、そのままぐっすり寝ることにしよう」
何度か押し問答をした挙句、ペリー二は声を荒げます。
「私を目の前にして何もせずに寝るなんて!そんなことがあるのですか!?これでは私は明日から笑いものになってしまいます!!」
「私と君の侍従しかいないでしょう。誰も口外などしないよ」
「そういう問題ではありません!ええ、分かりました。私達の侍従が言わないと言うなら私が明日、言いふらしてやります!陛下は私に指一本も触れない意気地無しだと!!」
ついにペリー二は大声をあげました。
伯爵家の令嬢ではあるものの、わがまま放題に育ったペリー二は伯爵家でもよく大声で駄々をこねていたのです。
今まで苦笑いしていた陛下も、ついに呆れたように顔を見せます。
「モートリーニ伯爵は随分とじゃじゃ馬姫を育てたようだね」
「陛下!」
「そんなにも疲れているならこのベッドを一人で使うといいですよ。私はソファでも眠りましょう」
皇帝はベッドから立ち上がるとソファへと移動し、陛下…と後を追うペリー二を制します。
「君は仮にも私の妻だ。どうか皇帝命令など使わせないよう、そこで眠ってください」
その声色にペリー二も従うしなく、不服そうな顔で一人、広いベッドに顔を埋めるのでした。
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