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新しい側室
祝祭を歓迎するかのように晴天が広がっています。
皇宮へと続く道なりには、数々のお店が立ち並び誰も彼もが浮かれています。
そんな華やかな道を2台の馬車が通ります。
権力を誇示するかのようなゴールドの馬車が2台見えると、道の真ん中で遊んでいた子どもたちも親に呼び寄せられて道を空けるのです。
そう、この馬車こそが今夜、皇帝の新たな側室へと任命されるペリー二が乗る、モートリーニ伯爵家の馬車でした。
街中の人々は羨望と疑念の目をこの2台の馬車へと向けます。
後宮に娘を送り出すなど正気では無い、という想いと、もしかすると万が一にもこの国の次期皇帝を産むことが出来る、という可能性への想いが交差します。
「見てみなさい、ペリー二。宮殿が見えてきましたよ。今日からあそこが、お前の暮らす場所になる」
この白髪の男性はモートリーニ伯爵。ペリー二の父親です。社交界での評判はそれほど良いものではないものの、頭が切れると評判でした。
「へーえ、やっぱり宮殿というと華やかなものですね。どこが私の住まいになるのかしら?」
「数多の側室がいるが、伯爵家から迎えるのは久しぶりのことだ。初めから申し分ない宮を貰えるだろう。そしてゆくゆくは、後宮の中で最も華やかで尊い宮が送られることになる……」
この2人の会話はとても他の人に聞かせられるようなものではありませんでした。
お付きの者が2台目の馬車に控えてることを良いことに、親子水入らずの会話は何とも下品です。
「安心してちょうだい、お父様。私が必ずお父様とお兄様に最高の地位をプレゼントして見せますから」
そう言って特に悪意も無さそうに無邪気に微笑むこの女性はペリー二伯爵令嬢でした。
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