『第2話』

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

『第2話』

 現れたのは、二メートル近くはあるかなあ、という、くまさんだった。  体はでかいが、目はわりにくるくるして、可愛らしい。  なにやら、長細い紙の束をヤマと抱えている。  『ども。月の輪ぐまの、としさんです。工作の時間を担当します。楽しくやりましょう。今日は、くまくまベーカリーの、箱折りをやりましょう。難しく考えないでくまさい。』  『うわ。展開図だ。怖いなあ。』  『なあに、まぼろしみたいなものでくま。それを、現実に変えるだけでくま。いろいろな箱を持ってきたくまから、楽しいよ。』  『はあ…………』  展開図を見て、なにになるかを想像するのは、ぼくのもっとも苦手とする分野のひとつである。  だいたい、あてずっぽうでやる。  ただ、これは、箱の組み立てだから、分かりやすいと言えば、まあ、そうだ。  くまのとしさんは、床に、どかっと座りこんだ。  『では、まず、これからくま。これは、長方形の菓子箱くま。まあ、やってみよう。』  『はいはい。』  ぼくは、一枚、ちょっと厚手の紙を取った。  すると、びっくり仰天した。  『はい。ではまず、ここ、折る。』  『わあ、紙がしゃべったあ!』  『くまくま。最近は、人間界でも、なんでもしゃべるくまま。』  『ま、たしかに。』  実際に、くまさんが話をする方が、びっくりではあるが。  『それじゃない。となり。はい、それね。90度、折りましょう。』  ぼくは、箱自身に教えられながら、箱折りをし始めた。        🍰    
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!