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『第2話』
現れたのは、二メートル近くはあるかなあ、という、くまさんだった。
体はでかいが、目はわりにくるくるして、可愛らしい。
なにやら、長細い紙の束をヤマと抱えている。
『ども。月の輪ぐまの、としさんです。工作の時間を担当します。楽しくやりましょう。今日は、くまくまベーカリーの、箱折りをやりましょう。難しく考えないでくまさい。』
『うわ。展開図だ。怖いなあ。』
『なあに、まぼろしみたいなものでくま。それを、現実に変えるだけでくま。いろいろな箱を持ってきたくまから、楽しいよ。』
『はあ…………』
展開図を見て、なにになるかを想像するのは、ぼくのもっとも苦手とする分野のひとつである。
だいたい、あてずっぽうでやる。
ただ、これは、箱の組み立てだから、分かりやすいと言えば、まあ、そうだ。
くまのとしさんは、床に、どかっと座りこんだ。
『では、まず、これからくま。これは、長方形の菓子箱くま。まあ、やってみよう。』
『はいはい。』
ぼくは、一枚、ちょっと厚手の紙を取った。
すると、びっくり仰天した。
『はい。ではまず、ここ、折る。』
『わあ、紙がしゃべったあ!』
『くまくま。最近は、人間界でも、なんでもしゃべるくまま。』
『ま、たしかに。』
実際に、くまさんが話をする方が、びっくりではあるが。
『それじゃない。となり。はい、それね。90度、折りましょう。』
ぼくは、箱自身に教えられながら、箱折りをし始めた。
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