1. お局様の送別会

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1. お局様の送別会

トンネルに入り、 電車の窓に自分の顔が映った。 つり革に掴まっている私は、 自分の姿をぼんやりと眺めた。 あぁ、疲れた...... 大学を卒業後、 物流会社に入社し2年目の〈 葉月 麻水 〉。 今日は、女子社員の中で大いなる地位を確立していたお局様の盛大な結婚祝いを兼ねた送別会だった。 後輩をこき使い、自分のミスは認めずに 他の人のミスには超厳しい。 雑用は全て自分以外の者がやるものという 図太い神経。 休憩室では足を組んで、コーヒーを飲みながら 半分脱いだパンプスをヒラヒラヒラ。 喫煙ブースでは、肘をついてタバコをスパスパスパ。 そんなお局様が、結婚式ではピンクのドレスを 着て、髪をクルクル巻き、めでたく寿退社。 もちろん送別会の幹事は、新参OLの私と、 同じ経理部のチャラ男〈 斉藤 〉が務めた。 妙にグルメなのが面倒なお局様の行きたい お店をリサーチして予約し、 大きな花束を用意した。 絶対に飲み会に参加しないであろう部長クラス の上司たちにも、趣旨を説明して会費を頂戴し、はっきりとリクエストされたお祝いの品「バルミューダ」のオーブンレンジのために、 せっせと資金集め。 送別会の盛り上げ役は、チャラ男に任せ、 私は料理を取り分け、お酒を注文し、 お局様をヨイショしてご機嫌なまま、 この会社から送り出すことに専念した。 そして滞りなく会を終え、 優しい先輩たちから、 ねぎらいの言葉を頂いて任務修了! あぁ、これで明日から、 平和な毎日がやってくる。
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