4. 顧問のお世話係

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4. 顧問のお世話係

 完全に信頼していた三枝木さんに裏切られた気分で、軽くショックを受けた私だったが、 簿記大好き女子の私は、憧れの「経理課」に 配属され、仕事面ではウキウキが止まらなかった。 一般的には地味なイメージがあるかもしれないが、経理というのはとても奥が深いのだ。 ―― 簿記を知らずして企業は語れない ―― 予習は完璧。 さぁ、本領発揮といきましょうか。 気合い充分な私は、入社してまず、 お局様からこう告げられた。 「経理課の女子社員は、顧問係です」 顧問係? なにそれ。 ◎ 毎朝、専用の湯飲みにお茶を入れ、 新聞3紙と共に顧問室へ届ける。 ◎ 顧問へ来客があった場合は、 お茶出しをする。 ◎ 用事を頼まれたら、即対応する。 ◎ 花の水替えも忘れずに。 つまり、顧問のお世話係ってこと? でも、顧問って、月に何度か顔を出すくらいの イメージなんですけど...... 「うちの顧問は会社が大好きだから、 毎日来るからね」 でも、これって経理の仕事? それとも新入社員の通る道なのか? 納得いかない気持ちが、ダダ漏れだったらしく、お局様は繰り返した。 「これは、経理の仕事です。なぜかと言うと、うちの顧問は、内部顧問で経理畑を歩んで社長となり、顧問に就任したから。ちなみに、今の社長も経理出身よ。つまり、分かりやすく経理課贔屓(びいき)なの。だから、顧問は経理課が面倒みてね。分かった?」 「はい......」 その時私は、正直、半信半疑だったが、 数日後にはお局様の言う意味をはっきりと 理解することになる。
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