8人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
6. 顧問の攻略法
ーー 企画室 ーー
2歳年上の先輩OL《 金本 さやか 》。
いくら食べても太らないという羨ましい体質らしく、とにかく細い。
私服もオシャレでシンプルなラインの黒髪ボブ
スタイルに、ぱっつん前髪がよく似合う。
「金本さん、
昨日頼んだ書類一式はできましたか」
「そこにあります」
「金本さん、すみませんが、
このデータを全営業所に送ってもらえますか」
「はい」
「金本さん、13時から来客があるので、
申し訳ないですが、応接室にお茶をお願いできますか」
「......ちっ」
ーー 経理部 ーー
12:00
オフィスの電気が一部消されるのを合図に、
ほとんどの社員がお昼の休憩を取る。
私もデスク回りを片付けていると、
内線が鳴った。
「葉月さん! 顧問っ!」
この内線電話に、
異常なほど早く反応するのが経理部長。
社内では、ほとんどの人がチャット形式でやり取りを行っているが、顧問だけはいまだに昔ながらの内線電話を使用する。
「はい、経理部。葉月です」
「あー、葉月さん。
こちらまでちょっと来られますか?」
「はい。すぐに伺います」
顧問に呼び出された私は、すぐに休憩に入れる準備をして、顧問室に向かった。
顧問のスケジュールは、
ほとんど頭に入っている。
昼前に来客があったので、おそらく手土産で
貰ったお菓子を渡されるのだろう。
今日はなんだろうな。
―― トントントン ――
「どうぞ」
「失礼いたします」
「休憩前に悪いね。○○さんからお土産を
貰ったから女の子たちで分けて頂きなさい」
そう言って、いつも糊のきいたワイシャツに
丁寧に手入れされたオシャレなスーツを着こなす顧問は、嬉しそうに老舗和菓子店の包装紙に包まれたお菓子をくれた。
◎ おじいちゃん顧問の攻略法その1
―― 素直に喜びを表現する ――
若い子が自分のおかげで、
無邪気に喜ぶ姿を見るが大好き。
「わぁ、ありがとうございます!」
◎ おじいちゃん顧問の攻略法その2
―― さりげない気遣い ――
自分のことを考えてくれたと感じるだけで
大満足。
「顧問もお一つ、いかがですか?」
「私はいいよ。私の分は君が食べなさい」
◎ おじいちゃん顧問の攻略法その3
―― 笑顔で癒す ――
目を合わせて優しく微笑まれるだけで、
ご褒美をもらった感覚に。
目元と口元を意識して、笑顔で退室。
扉はゆっくりと丁寧に閉める。
慣れてしまえば、簡単なことだ。
〈 これは、きっと最中ね。
これ、美味しいから好き~ 〉
最初のコメントを投稿しよう!