ボクの、未来のお嫁さん!

2/9
前へ
/9ページ
次へ
 動揺しつつも史織は、ミクヤを振り払おうとはしなかった。  というかコアラみたいにくっついて、彼は離れようとしない。  やがて二人の背後から、クスクスと、女子の嫌味な笑い声が聞こえてきた。 「あらやだぁ。モテモテですこと、どっかのヤンキーさんが」  史織は奥歯を噛みしめて、振り返る。  班員である日下部(くさかべ)(ともえ)が、長いスカートの足を止めて、上から目線でミクヤたちをながめ回していた。巴は左右の手に、髪をかわいくリボンで結わえた女児、二人をつれている。  まだ赤ら顔をした史織が、吠える。 「てめっ、面白がってないで助けろよな」 「やん、巴、コワーイ。良い子たち二人が泣くといけないから、お外で遊びましょうねー」 「はぁーい」 「ともえちゃん、うさぎさん、すき? いっしょに、葉っぱのごはんあげよう」 「もちろん。私も大好き! ふわふわのうさぎさん。さあ見に行きましょ~」  女児は二人とも、行儀よく、落ち着いてもいた。三人でニコニコしたまま、日光の差す屋外に出てゆく。 「ったく。クソ、ああいうのなんかイイよな……どうやったら女の子に慕われるんだろ」  目で追いながらぼやいた史織を、ミクヤはもう一度、黙って見つめた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加