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第一章 甘いやさしさ
目が覚めてすぐ、身体の違和感に気がついた。
喉がカラカラに乾いている。全身が鉛のように重い。
胸に渦巻く不快感を堪え、とりあえず身体を起こそうとする。すると、腰回りにまとわりついていた温かなものが、私の背中をなだめるようにひと撫でした。
「おはよう」
頭上から声。
おそるおそる顔を上げる。
「は、……波留、くん」
「思ったとおりひどい声だな。だから水分をとれと言ったのに」
波留くんはくつくつ笑うと、私を抱きしめていた腕をほどいてキッチンの方へと歩いて行った。唖然としてその背を見送りながら、私は少しずつ今の状況を整理する。
ええと、ここは私の家じゃなくて、目の前にいるのは大学時代の元彼の波留くんで、それからええと……ええと。
少しずつ記憶が鮮明になるにつれ、身体中から冷汗が噴出してくるのがわかった。
私、もしかして、やってしまった……?
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