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「藤原、そんなに俺の心が欲しけりゃ、ストーカーになってる彼女を、早いとこなんとかすれば」
「その問題が解決したら、俺と付き合ってくれるのか?」
那月の返答で、先の見通しが一気に明るくなった。嬉々として、質問を投げかけてみる。
「付き合うかどうかは、そのときの気分による。ちなみに俺は、ビッチじゃないから。元カレが勝手に、酷い噂を流しただけなんだ」
「おまえ、そのときの気分じゃなくて、そこは素直に付き合えばいいだけだろっ!」
(俺はまんまと噂話に乗せられて、那月の扱いを最低なものにしていたんだな。よくよく考えてみたらアイツの部屋には、他の男の私物がいっさいなかったっけ。それなのに俺は――)
「那月あのさ、提案なんだけど」
「なに?」
俺の提案を従順に聞き入れてくれるような声色じゃなかったが、思いきって語りかけた。
「俺と堂々と付き合ったら、那月の酷い噂話とストーカーになってる元彼女も、そろって一掃できる気がする」
「そうなると藤原がゲイだってことを、みんなにカミングアウトする流れになるけど、それでいいのかよ?」
那月が俺の身の上を案じてくれたくれたことに、胸の奥がじーんとした。
「まったく問題ない。俺は那月が好きなんだ。これ以上自分の気持ちを偽るのは、もうたくさんだって!」
即答できるくらいに、迷いはなかった。好きという気持ちを偽ることなく、那月の隣に胸を張って並んでいたいと、思わずにはいられない。
「だったら俺からも提案、いい?」
「ああ、どうぞ」
どこか遠慮がちな声の感じで、那月らしい無茶ぶりな提案をされるかもしれないと身構えた。いろんな考えがごっちゃになっていて、不安とドキドキが俺を襲った。
「彼女がいない藤原は、これからなにをするのかなぁって」
「やることないから、このまま家に帰るところだけど」
「それなら家に帰らないで、俺んチに戻ってくれるかな。藤原が渡してくれたチョコを、一緒に食べたい」
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