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こんな人目のつく場所で、キスするような派手なことをしやがってと思ったが、大柄な藤原が自分を隠すようにキスしていることに気づいた。空いている片手で目の前にある胸を連打したら、呆気なく唇が解放される。
「っ……。アンタ、なにを考えてるんだよ?」
かわいい彼女持ちの藤原が、誰かと浮気しているのを目撃されないようにとった、咄嗟の配慮なのかもしれない。そんな考えが容易に導き出されてしまったのに、思わず訊ねてしまった。
「那月目当てのヤツに見られたら、ここぞとばかりに嫉妬されるかもしれないだろ。大学構内ではかなりの有名人だからさ」
腰に手を当てながら俺の顔を見下ろし、得意げに豪語されても信用できるわけない。だってコイツは遊び慣れてる。さっきされたキスのうまさが、すべて物語っていた。
「自分の保身のために、やったんじゃないのか?」
「まさか! さっきのキスくらい、彼女に見られても全然かまわないし、その先もOKだって」
ひょうひょうと言ってのけた藤原を、このときは穴が開く勢いでじっと見つめてしまった。遠くから見ていた印象とはまるで違う、この男の底の知れなさに、俺自身が沸々と興味がわいてしまったのである。
(気がつけば、クリスマスイブもヤっちゃったし、こうしてバレンタインにも寝てるなんて、まんま愛人みたいな関係だよなー)
そんなことを思いながら、しっかりベッドから起き上がり、手にしている物に視線を落とした。
クリスマスプレゼントはなかったくせに、他人から貰ったバレンタインのチョコを横流しするような悪い男に、まんまと手懐けられてるみたいだった。
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