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躰だけじゃなく気持ちも散々翻弄されて、いつしか藤原の傍にいることに、居心地の良さを感じてしまっている始末。遊び慣れたアイツの手腕なのか、俺を押さえるポイントをきっちり見極めて行動されるせいで、どうしても求めずにはいられなかった。
「マジで悔しい! 本命になれなくてもいいやとすでに諦めてるのに、なんだろうな、このムカムカする気持ちは。藤原のことが好きな女のコから貰ったチョコを俺に投げて寄こした、酷い男だって言うのにさー」
女子受けしそうなかわいらしい包装紙を苛立ちまかせにビリビリ破り、自分が変形させた箱を開ける。すると中からハート柄で装飾された、一枚の小さなカードが出てきた。
【好きな相手に、あなたの想いが届きますように】
多分、洋菓子店がサービスで入れたものだろう。薄いピンク色のカードに印刷された文字を読んだ瞬間、大きなため息を吐いてしまった。
(藤原にこれを渡した女のコ、壮絶にかわいそすぎるだろ。俺よりも不幸だ……)
眉根を寄せながら箱からカードを取り出して、そのままゴミ箱に投げ捨てた。自分の想いも一緒に投げ捨てる気持ちで、勢いよく放り投げたのはいうまでもなく。
次にチョコを食してやろうと、透明の仕切りを外してみる。ホワイトチョコの表面に印字されている、黒い文字を目の当たりにして、取り出そうとしていた手がぴたりと止まった。
「……は? なんだよ、これは――」
愛の告白文が印字されているわけじゃなかったが、俺の思考を十二分に混乱させるそれを見たからこそ、慌ててスマホで藤原に連絡をとったのだった。
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