同級生

8/8
前へ
/8ページ
次へ
見れば、彼女がにこやかに挨拶をしながら、こちらに向かって歩いて来るではないか、 「お早うございます」  すれ違い様に言って、通り過ぎた時、 「もしかして、上原君!」  振り返ると、笑顔いっぱいの彼女が私を見ていた。 「ひょっとして!」  私の声は、緊張で少し上ずっているが、彼女はにこやかに笑って返事をしてくれた。 「はい!」 彼女に「上原君」と呼ばれた私の心は、一人ぼっちだった淋しさも、定年を過ぎた年寄りだという事も忘れて、五十年前のあの幸せな日に、翼を広げて戻っていった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加