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見れば、彼女がにこやかに挨拶をしながら、こちらに向かって歩いて来るではないか、
「お早うございます」
すれ違い様に言って、通り過ぎた時、
「もしかして、上原君!」
振り返ると、笑顔いっぱいの彼女が私を見ていた。
「ひょっとして!」
私の声は、緊張で少し上ずっているが、彼女はにこやかに笑って返事をしてくれた。
「はい!」
彼女に「上原君」と呼ばれた私の心は、一人ぼっちだった淋しさも、定年を過ぎた年寄りだという事も忘れて、五十年前のあの幸せな日に、翼を広げて戻っていった。
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