維士 小学生・高校生

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 維士を送り出した朝は、一仕事終えた達成感が僅かにある。  ここに引っ越してきて2か月たった。祖父の生まれ故郷だが、今は知り合いも遠い親戚もいない、人口5千人の海の近くの小さな町だ。  東京で家族3人、細やかな幸せを夢見たが叶わなかった。  維士の容姿は整い過ぎて人形のようだ、感情を全く表に出さない子どもで、人形が動いているように見える、泣く事もない。親の私でさえ日に日に増す変貌に驚く、周りが放っておくわけがない、色々な人達が集まって付いてくる。    外出が出来なくなり、維士の人への恐怖心は尋常ではない。  朝起きると、押入れに自分から入って行くようになっていた、幼稚園も1日で辞めた。  夫だった人も毎日イライラしていた、維士への嫉妬なのか私が悪いのかかわからないが、家に帰ってこなくなった。    人が少ない所に行こうかと考えてたら、祖父から昔聞いたこの地を想い出した。
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