信一 プロ 人気下向

1/9
49人が本棚に入れています
本棚に追加
/287ページ

信一 プロ 人気下向

 2011年3月 信一  東京駅新幹線入口で、おれはドクを見た。  異世界の人間が、スーツを着て地上にいるくらい、目立っていた。心臓がバクバクして動揺したが、カメラを向けられ生放送中だ、歩きながらの囲み取材だった。口を開ける必要のない、TV受けの取材だった。  ドクの側をすれ違う時、一行は、ドクに見惚れた、一瞬カメラがドクに向いた、大丈夫かなと心配になった、 「ドク」と思わず声を出した。  マイクに拾われた、しまったと思ったが遅い、ドクはマネキンのようにスッと立っていたが、誰のことも見てないように見えた。  1年ぶりだった。  ドクの側に格好いい男が来た、肩を抱いて見つめあって、ドクの天使の超美形が、笑顔になって笑いあってた、何なんだ、ドクどうなった、その男誰だ、この一瞬でショックだった、仕事中だがイライラして来た、駅の外で待っている車に乗るまでが仕事だった。  その後、戻っても、もういないだろう。車に乗り込み目を瞑った(会ったところで何を言うんだ、嫌われただろう)とおれが、おれに話かけた。この1年間は、未来がなく、もう探す意味も見いだせず、空だった。
/287ページ

最初のコメントを投稿しよう!