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そう言って2人で笑った後、剱持は真剣な顔でもう一度環に言った。
「何があったか俺に話せ。隠せると思うな。俺が必ず、環を守る」
「うんっ…」
環は涙を浮かべ、メールの事を剱持に話した。剱持は環を励まし慰めた後、必ず送信者を見つけ出すと約束した。
夕食後、剱持が環に細長い封筒を差し出す。
「何、これ?」
環は封筒を受け取り、封を開け中を確認する。するとチケットが2枚入っていた。封筒から取り出してチケットを見る。
「今日、尋がくれたんだ。バスケの国際試合のチケット。日本対中国。アジア大会の予選だってさ」
「橘さんと三浦さんが出るんだね!」
「あぁ……それと、霧山選手もな…」
「あっ…」
(そうだ。彼も日本代表なんだ…)
「環、尋が見に来てってさ。公式の試合は見た事ないだろ? しかも国際試合」
「うん…」
「今週の日曜だ。行こう」
「うんっ」
そして日曜日。環と剱持は車でチケットに書かれた会場に向かった。少し早めに到着し、座席に並んで座る。会場内はもうすでに派手な音楽が流れ、観客の歓声や応援の声で盛り上がっている。
「すごいねぇ」
環は剱持の耳元で少し声を大きくして話す。隣同志の声もかき消されてしまうほど、会場内は騒がしい。しばらくコートを眺めて話していると、選手達がコートサイドのベンチに姿を現した。荷物を置き、それぞれ準備運動を始めている。
「あっ、ほらっ、尋と心だ」
剱持が指さす方を見ると、同じユニフォームを着た橘と三浦の姿があった。そのすぐ後ろから、霧山の姿も見える。
「ほんとに霧山さんもいるんだね…」
「あぁ…」
日本選手と中国選手がベンチに集まり準備運動を終えると、それぞれのコート内のゴールに向かってジャンプシュートの練習を始めた。会場内も多くの観客でほぼ満員状態。歓声は大きく、会場内は早くも盛り上がっていた。
「すごい、楽しみ…」
「あぁ、俺も久しぶりだからな」
「2人には会えるの?」
「あぁ、一応、帰る頃に会うようにはなっている」
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