2話 ブラック爆誕

7/7
前へ
/314ページ
次へ
 その時、向こうの木陰から都合良く、令嬢達がワラワラと出てきた。 「エヴァン様~♡」  令嬢の一人は不揃いなクッキーを並べた皿を持っていた。手作りのようだ。 (何でお皿を持ってきてんの?) 「わたしたち、あちらの庭でお茶会をしておりますの。はい、どうぞ。あ・じ・み♡」  そう言って、皿を持っている令嬢の近くにいた別の令嬢が、エヴァンの口元にクッキーを持ってきた。 「君たちを疑うわけではないのだが、出どころの分からないものや手作りのものは食べないんだ。仕事に差し障ることがあるからね。すまない」  そう言って、エヴァンは差し出された令嬢の手にキスをした。 (うへぇ……) 「キャー♡」  キスをしてもらった令嬢は真っ赤な顔をして倒れ、皿を持っている令嬢は険しい顔をして、倒れた令嬢を睨んだ。 (女の世界はいつ見ても怖いわね……) 「せっかくなのに、本当にすまないな」  エヴァンが申し訳なさそうに眉尻を下げると、令嬢達がこぞって色めき立った。 (何故!?) 「それではエヴァン様、お休みの時にでもお茶会にいらしてくださいね。きちんとした所で作らせた美味しいお菓子をご用意しております♡」  令嬢達がエヴァンの腕に絡み付きだした。 「あぁ、行かせてもらおう」  エヴァンは嫌な顔ひとつせず、にこにこしている。 「すまないが、私はこれから交代の時間なのだ。後で菓子を届けさせよう」  爽やかな笑顔だった。その笑顔に令嬢達がくらんでいる。 (……) 「ありがとうございます!♡」 「ではまたの機会に是非来てくださいね♡」 「あぁ。では失礼する」  エヴァンがにっこり微笑むと、取り囲んでいた令嬢達が「キャー♡」と黄色い声をあげて、バタバタと倒れていった。 (とんだ色男ねぇ……。まぁ、取りあえず助かった)
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加