3話 ア────ッッ!

1/5
前へ
/314ページ
次へ

3話 ア────ッッ!

 神殿は王宮の敷地内の静かな場所にあり、前フローラの夫であるフェリクス三世の他、歴代の王や妃が眠っている。  フェリクスは優しい人だった。内気な前フローラをいつも気遣っていた。守っていた。  フローラは、先ほど庭師からもらった花をフェリクスの聖廟に添えた。王太后様の命だと言えば、簡単にくれた。チョロい。 「フェリクス……くん……」 (おっ!?)  前フローラの記憶が体が、自然とフェリクスと呼んだ。  心も反応して、とても悲しい。涙が溢れ出そうだ。 「フローラはもう大丈夫だからね。私が来たから! だから、安らかに眠ってくださいね……」  祈りを終えたフローラは、神殿の正面に向かった。祭壇には、聖剣が刺さっている。  伝説によると、この国をつくった神の忘れ物だという。神はこの聖剣を使って、悪しき者がはびこるこの地を平定したのだ。  聖剣は、この国ができた五百年前、ここに刺さってより、一度も抜けたことかない。神々の子孫である王や腕自慢の剣士でさえ、誰も抜くことができなかった。  ちなみにどうせ誰も抜けないからと、誰でもいつでも聖剣抜きを試していいことになっている。  フローラは聖剣に手をかけ、力を込めた。ここに来たついでにと、軽い気持ちで試したのだ。
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加