1話 厚かましいんだよ!

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「まぁ、いいわ」  美咲はベッドに横たわった。  おそらく、自分は死んでしまったのだ。心臓発作で、車道に倒れて、そのまま──。 (はぁ……。皆、悲しんだろうな……)  両親や妹、姪っ子の顔を思い出すと悲しくなる。 (夫はどうでもいいや)  感謝を伝える間もなくあっけなく死んでしまった。  楽しみにしていたアニメの続きもマンガの続きももう見れない。  そう長くもない人生だったが、後悔することばかりだ。 (死ぬと分かっていたなら、あの菓子パン食べておくんだった……! あのケーキもスナック菓子も……)  でも、もう戻ることはできない。 (はぁ、悲しすぎる……)  涙目になった美咲は、ベッドから起き上がり、ドレッサーに向かった。 (楽しいことでも考えよ。こういう場合、美少女に生まれ変わっているのが定番よ! 過去を捨てて生まれ変わるの! 切り替えるのよ、美咲!)  そしてこれからは、後悔のないように生きていく!   「どれどれ、どんな美少女に……」  ん? 金色の髪の毛に碧い眼。そして、日本人離れした抜群のスタイル。美咲より、はるかに美人だった。  だが、目尻にちりっと小じわがある。白髪は見あたらなかったが……。 「──ババアかよ!!!!!」   そして、ハリがなく、シワの刻まれた首にかかるラブリーなペンダント。 「似合わねぇぇぇ!!!」  美咲は思わずペンダントを引きちぎって投げた。 「フローラ・グレンヴィル。四十二歳」  頭上からさっきのお化けの声がする。 「しかも前より歳とってるよー」  美咲はその場で四つん這いになって、拳を床に打ち付けた。  敷かれた絨毯がふかふかだった。 「美しいだの、少女だの厚かましいんだよ! 第二の人生を与えられただけ、ありがいたと思え」   「うっせー、だまれ!」  美咲は立ち上がり、天井に両拳を突き上げて叫んだ。 「どうしたのです!?」  慌てた様子で部屋に入ってきたのは、フローラと同じ、背の高い金髪碧眼の青年だった。後ろに茶髪の少女もいる。  この子たちは……?
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