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「まぁ、いいわ」
美咲はベッドに横たわった。
おそらく、自分は死んでしまったのだ。心臓発作で、車道に倒れて、そのまま──。
(はぁ……。皆、悲しんだろうな……)
両親や妹、姪っ子の顔を思い出すと悲しくなる。
(夫はどうでもいいや)
感謝を伝える間もなくあっけなく死んでしまった。
楽しみにしていたアニメの続きもマンガの続きももう見れない。
そう長くもない人生だったが、後悔することばかりだ。
(死ぬと分かっていたなら、あの菓子パン食べておくんだった……! あのケーキもスナック菓子も……)
でも、もう戻ることはできない。
(はぁ、悲しすぎる……)
涙目になった美咲は、ベッドから起き上がり、ドレッサーに向かった。
(楽しいことでも考えよ。こういう場合、美少女に生まれ変わっているのが定番よ! 過去を捨てて生まれ変わるの! 切り替えるのよ、美咲!)
そしてこれからは、後悔のないように生きていく!
「どれどれ、どんな美少女に……」
ん? 金色の髪の毛に碧い眼。そして、日本人離れした抜群のスタイル。美咲より、はるかに美人だった。
だが、目尻にちりっと小じわがある。白髪は見あたらなかったが……。
「──ババアかよ!!!!!」
そして、ハリがなく、シワの刻まれた首にかかるラブリーなペンダント。
「似合わねぇぇぇ!!!」
美咲は思わずペンダントを引きちぎって投げた。
「フローラ・グレンヴィル。四十二歳」
頭上からさっきのお化けの声がする。
「しかも前より歳とってるよー」
美咲はその場で四つん這いになって、拳を床に打ち付けた。
敷かれた絨毯がふかふかだった。
「美しいだの、少女だの厚かましいんだよ! 第二の人生を与えられただけ、ありがいたと思え」
「うっせー、だまれ!」
美咲は立ち上がり、天井に両拳を突き上げて叫んだ。
「どうしたのです!?」
慌てた様子で部屋に入ってきたのは、フローラと同じ、背の高い金髪碧眼の青年だった。後ろに茶髪の少女もいる。
この子たちは……?
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