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2話 ブラック爆誕
「母上!? 大丈夫ですか?」
(母上!? フローラさんの子どもね)
美咲は咳払いをした。
「大丈夫よ。ちょびっと叫びたかっただけ」
「怖い夢を見たのですね」
息子が手を引いてベッドまで連れていってくれた。娘は床に落ちているペンダントを拾い、ドレッサーに置いた。
(ええ子たちや……)
美咲は子どもたちを見つめて微笑んだ。
よく見ると二人とも自分も寝間着だった。今は夜なのだ。
(カーテンが閉まってて、全く分からなかったよ……)
「夢にお化けが出できて驚いたの。お騒がせしてごめんなさいね。さ、早く寝なさい」
「おやすみなさい、母上」
息子は挨拶をしたが、娘はそそくさと部屋を出ていった。
(反抗期!? 様子を見に来るだけマシか?)
「おやすみ、ババア」
天から声がした。
(……あんのお化け、しばく!)
美咲はベッドに横たわり、ぼんやりと天井を眺めていた。フローラの魂が融合しているのか、さっきから頭が混乱している。
美咲の中にフローラの記憶が入っていく。
「うっ……。気持ち悪っ!」
シルヴァール王国の王太后フローラ。国王だった夫は一昨年、病を得て亡くなり、王位は息子が継いでいる。
気弱で大人しい性格をしており、言いたいこともいえず、悔しい思いをして一人でよく泣いていた。
夫が亡くなってからは、激しく気落ちし、ずっと部屋に引きこもる毎日。
(……弱えぇ)
「弱っ! フローラ、弱っわ! これからは言いたいことをズケズケ言ってやる! 後悔のないように厚かましく生きてやる!」
美咲は、あることをきっかけに、人目を気にせず厚かましくなってきていた。
その美咲がフローラとして生まれ変わったのだ。
(ところで……)
フローラはドレッサーの上のハート形のラブリーなペンダントに目をやった。
(あれ、試しに使ってみようかな?)
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