2話 ブラック爆誕

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「……クビな」 「なっ!」  フローラに背を向け、道具を片付けていた侍女は、ビクッと体を震わせて振り向いた。  前までのフローラなら、涙を飲んで外に出ることを諦めただろう。    だが、中身が美咲になった今は違う。昔のフローラが言えなかったことを言ってやる。 「クビ!」 「──そ、そんなぁ! お許しください! 王太后陛下!」 「クビ! クビ──ッ!! 早く出ていって!」  フローラは顎を付きだし、首を斬る仕草をした。目ん玉ひんむいて。 「ひぃぃぃぃっ!」  侍女は青い顔をしながら部屋を出ていった。  その後、侍従長が事情を聞きに来て、他のメイドがフローラの身支度を手伝った。  長く仕えている侍従長は前フローラの味方のようだった。「王太后陛下が外に出た!」と涙を流して喜んでいた。  前フローラは花が好きだった。とりわけフローラの部屋から見えるこのあたりの花は、目を見張るほどに美しい。  だが、散歩中の美咲の気分は晴れなかった。 (だる……)  分かってはいたが、付き人がいる。それもたくさん。久しぶりの散歩に心配した侍従長が、護衛官の他、侍従や侍女、メイドに医者まで付けたのだ。 (何人いるんだよ……。一人でゆっくり見たいんだけど? あ! そうだ!)    早々に散歩を切り上げ、自室に戻ったフローラは、ドレッサーからラブリーなペンダントを手にすると声高に叫んだ。  叫ばずともいいと言われたが、叫ばずにはいられない。 「変身!」 ☆.。.:.+*:゚:*+.:.。.♡.。.:.+*:゚:*+.:.。.☆ 「アッハ! こりゃいいわ!」  メイド服だし、誰も王太后だとは思わない。それに、メイド服がなかなか可愛い。  鏡の前でくるりと回ったフローラは、ニヤリと笑ってバルコニーに出た。ここからこっそり外に出るのだ。
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