194人が本棚に入れています
本棚に追加
1月某日。
臨床実習先である名古屋南桜総合病院のリハビリテーション部の朝礼。
約50人のリハビリスタッフの前での挨拶から、あたしの臨床実習はスタートした。
「同じく、岐阜濃飛医療大学3年作業療法学科の戸塚絵里奈です。えっと~、先生方の技術をひとつでも多く盗めるように頑張りま~す!宜しくお願いしま~す。」
ちょっと緊張感が足りなさそうな同級生の絵里奈と一緒に。
月曜の朝のせいなのか
それとも学生のあたし達はよっぽど浮いているのか、リハビリスタッフの先生方の視線が痛い。
「じゃ、朝礼終わります。今日も1日宜しくお願いします。」
刺さりまくった多くの視線から解放され、息をつこうとした瞬間だった。
「学生さん、初めまして。臨床実習指導責任者の松浦です。今から実習のオリエンテーション始めるから作業療法室へきて下さい。」
分厚いファイルを抱えた20代後半ぐらいの男の先生があたし達に近寄ってきた。
サラサラで目にかからないよう程度に綺麗に切り揃えられている前髪
クッキリ二重で艶やかな黒目の大きな瞳
マスクで隠れているせいで口元がどんな感じなのかわからないけれど、穏やかさが伝わってくるやや低めの心地いい話し声
隣にいる絵里奈なら間違いなく王子様系イケメンと表現するであろう松浦先生
この先生なら優しく教えてくれそう
さあ、3週間の実習、頑張る!
「はい!!!」
『・・・はい。』
隣にいる嬉しそうな絵里奈に先を越されたけれど、返事をした。
面食いな絵里奈は絶対、松浦先生にオチた
面食い度低めのあたしからみても松浦先生はイケメン認定できる
「そういえば、あいつ、遅いな。ちょっと呼んでくるから、オリエンテーションの資料、読んでおいてください。」
そんな松浦先生は立ち上がりながら、丁寧にファイリングされた資料をあたし達に手渡し、作業療法室から出て行ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!