Chapter.1

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冷静になってみれば何故そうしたのか、 自分でも分からない。 ただその時 星奈はフルスピードで追い掛け始めた。 暗い下り坂でシルエットだけを頼りに走る。 “誰か”はかなりの鈍足だった。 黒い大きなカバンを抱えている上に 山道は全く舗装されていない。 星奈はドンドンと距離を詰めていく。 そして木の根につまづき 競争相手は派手にすっ転んだ。 星奈は相手の腕を取り、仰向けに転がすと スマホのライトでその顔を照らす。 意外にも“誰か”は 自分と同い年くらいの女の子だった。 丸眼鏡の向こうで目が眩しそうに瞬いている。 星奈はスマホで照らしながら肩で息をした。 「……何で逃げた?」 「貴方が、追うから……」 丸眼鏡はキョトンとした顔を横に傾けた。 「何で追ってきたの?」 「アンタが逃げるから」 星奈は身体を起こすと腰に手を当てた。
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