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冷静になってみれば何故そうしたのか、
自分でも分からない。
ただその時
星奈はフルスピードで追い掛け始めた。
暗い下り坂でシルエットだけを頼りに走る。
“誰か”はかなりの鈍足だった。
黒い大きなカバンを抱えている上に
山道は全く舗装されていない。
星奈はドンドンと距離を詰めていく。
そして木の根につまづき
競争相手は派手にすっ転んだ。
星奈は相手の腕を取り、仰向けに転がすと
スマホのライトでその顔を照らす。
意外にも“誰か”は
自分と同い年くらいの女の子だった。
丸眼鏡の向こうで目が眩しそうに瞬いている。
星奈はスマホで照らしながら肩で息をした。
「……何で逃げた?」
「貴方が、追うから……」
丸眼鏡はキョトンとした顔を横に傾けた。
「何で追ってきたの?」
「アンタが逃げるから」
星奈は身体を起こすと腰に手を当てた。
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