Chapter.1

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丸眼鏡は咳き込みながら上体を起こし、天を仰ぐ。 「あー、ビックリしたぁ。 だって、歌声聞こえたと思ったらさ、 急に追い掛けられてそのまま押し倒されて」 「押し倒してない、 アンタが勝手にすっ転んだだけ」 星奈は呆れながらため息をついた。 「こんな時間に一人で何してるわけ?」 「それはコッチも聞きたいところだけど……」 「言いたくない。アンタは?」 「右に同じく……」 丸眼鏡は立ち上がると スカートの汚れをはらった。  星奈はため息をつきながらスマホをしまう。 すると、丸眼鏡が口を開いた。 「……ねえ、一つだけ良い?」 「なに?」 「さっきの歌ってたやつってさ、 ネグレクトの『箱庭』だよね?」 星奈の動きが止まった。 「知ってるの?」 「知ってる!わたし好きなんだぁ、 他の人あんまり知らないから嬉しくてつい…」 星奈自身も同好の志に会ったのは初めてだった。 メジャー・デビューしているものの 知名度が低いアーティストは少なからず存在する。 “ネグレクト”もその一つだ。
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