2 初デート

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 完璧なんかじゃない。  亜希良の器はずっと何かが欠落しているような気がしていた。  けれどもそこに穂乃果を注ぐと、やっと隙間が埋められる。  そのことを穂乃果自身は知らない。 「亜希良くん、次はどれに乗ります?」 「何でもいい。穂乃果が選んでくれ」 「ええ? じゃあ、そうですね……」  本当は次に乗りたいものの順番が彼女の中でシミュレーションし終えているんじゃないかと思っていたらやはりそうだった。よほど楽しみだったんだなと思うと頬が緩む。 「穂乃果が乗りたいものに全部付き合う」 「本当ですか? 嬉しい」  恋人繋ぎで園内を歩くだけでも楽しかった。  普段、学校ではカッコつけすぎて穂乃果にも「塩対応すぎます!」と怒られている。 「ちょっとくらい恋人の雰囲気出してください……」  それは、恋人の契約をした翌日にみんなの前で緊張しすぎていた穂乃果に、亜希良が言った言葉と同じだった。  みんなに見られている時は恋人らしく振る舞う約束を、本物になった途端にやめてしまった自覚が亜希良にはある。  誰にどう思われようが、亜希良には穂乃果がいるのだから、もうそれらしく振る舞うポーズなど必要ないと思ってしまった。それが穂乃果には寂しかったらしい。  だからせめてこんな日くらいは。  それに、もう一つの契約の終わる時間も迫っている。 「もうすぐ母親が帰ってくるな。嬉しいか」 「はい。もちろん! すっごく楽しみです!」  穂乃果は嬉しそうに笑った。  穂乃果には本物の家族がいる。そのことに嫉妬したりはしないけど、今までのように自由に会えなくなると思うと寂しい。 「家政夫の仕事が必要なときはまたいつでも依頼してくれ」 「そっか……もうやめちゃうんですね、うちの家政夫」  穂乃果は急にしんみりとする。 「料理も少しはできるようになっただろ? 俺が教えてやったし。あとは掃除。後でまとめてやろうと思うなよ。小まめに片付けておくこと。それから洗濯。ちゃんと衣類についてるマークを見て、適切に」 「わ、分かりました分かりました! ちゃんとやりますっ」  穂乃果は鼻を赤くした。 「そんなこと言われたら……寂しくなっちゃうから言わないでください」
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