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帰宅
花枝を伴って退院した和愛は、花月の車に乗って宗田本家に向かっていた。赤ちゃんのお披露目式だ。メンバーは前回のお泊り組の曾祖父母たちだ。そこに蓮とジェイも招待された。
実はこのお披露目式、花の断固とした反対があった。
「赤ん坊は生まれて一か月は人前に出すもんじゃない」
花なりの自論がある。だが周囲の願いに負けた。
「『お七夜』という儀式があると聞いたよ。花枝にも和愛にも負担はかけないから。ちゃんと寝室もクリーニングしているから」
とまさなりさんが願い、哲平にもそう乞われた。
「お七夜、してやろうよ」
「まだ七日じゃない」
「堂本の祖父ちゃんたちも帰っちゃうんだよ。頼むよ」
それで折れた。
花枝は宗田家の血筋を色濃く継いだような女の子だった。父親似。つまり、花月に似て、花に似て、まさなりさんに似ている。
「男の子は女親に、女の子は男親に似た方がいいというから」
と勝子が哲平を慰める。だが口元は千枝に似ているような気がするし、ぱちっと開いた目も、時折見せる笑顔も(千枝に似ている!)と哲平は1人思うのだった。
「哲平、良かったな! めでたく祖父ちゃんになっておめでとう!」
蓮が微妙な祝福をする。
「いいんだ、俺に似てなくたって」
ちょっといじけてはいる。男親に似ればいいなら、自分に似ていてもいいじゃないか、と。
ぱたぱたとジェイが哲平のそばに行く。
「花枝ちゃんのつむじ、哲平さんにそっくりだよね!」
ジェイの言葉を聞いて、哲平は急いで花枝を覗きに行った。戻って来た顔はにっこにこだ。
「ほんとだ! あれ、俺のつむじだよ! 母ちゃんにも確認してきた」
勝子もつむじの話で場を盛り上げている。
花の望む通り、ひとしきり花枝を全員が抱き終わって、真理恵に付き添われた和愛は花枝を抱いて寝室へと向かった。
「疲れたでしょう!」
和愛は花枝に母乳を飲ませながらにこっと笑った。不思議なものだ、『母乳を飲ませる』と言う行為が女性に母性を与えている。
「みんなに喜んでもらえて嬉しい! 本当にいいの? 明日からお世話になって」
「こら、水臭いことを言うんじゃないの! 赤ちゃんを産んだ後の女性の体ってとてもデリケートなのよ。1人でいるなんてとんでもない話よ」
産後の女性は実家に戻ることが多いが、各曾祖父母初め宗田家のみならず、哲平でさえ他の誰にもに和愛と花枝を預けるつもりがない。
和愛は宗田家で大きくなった。ある意味、宗田家が和愛の実家でもあるのだ。
花月は実家から大学に通うのだが、元々が近所だ、大した距離の違いが無いのだからそれもどうということもない。
そしてこれから一か月余りを母子共々、花の健康管理下におかれることになる。
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