喜びと不安

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  「ただいまー」  真理恵が帰って来た。ジェイが荷物を引き取りに行く。 「ありがとう! 来てたの?」 「うん。花さんのことも心配で」  ちょうどその時電話がかかってきた。 「はい、宗田です」  真理恵が出るとまさなりさん。 『明日、ホームパーティーを開こうと思ってるんだよ。都合どうかな?』 「お客さま、無しで?」 『内輪だけだ。君たちと、もちろん哲平君には来てほしい』 「わ、喜ぶと思う!」 『花は……どうだろうか』 「今、寝てるの」 『そうか……』  まさなりさんの声が一気に沈み込む。 『明日、楽しみにしているよ』 「はい! ゆめさんに花くんの好物をお願いしてね」 『分かった、伝えておくよ』  電話を切ってから、「あ」と真理恵が声を出した。 (蓮ちゃんたちも一緒にって言うの忘れた) 真理恵にしてはうっかりだ。きっとまさなりさんは喜んで『もちろんいいとも!』と言ってくれただろう。  先に都合を聞いてから、と真理恵は蓮とジェイに聞きに行った。 「明日ね、まさなりさんがホームパーティーを開くの。蓮ちゃんたちもどう? きっとまさなりさんも喜ぶわ」 ジェイが残念そうに答える。 「明日、町内会の集まりがあるの。ついでに食事会もやるから」 「悪いな、せっかく誘ってくれたのに。今度ぜひ参加させてもらうよ。明日は家族でのんびり楽しんでくれ」 「そっかぁ、哲平さんは大丈夫?」 「俺はヒマ! 本家なら花ものんびりできるだろうし。じゃ、みんなでわいわい行くか」  哲平が元気な声で言うと、花が大丈夫な気がしてくるから不思議だ。 「来てたの?」  起き上がって来た花は確かに顔色が悪かった。明日の用意があるから蓮もジェイも今日はゆっくりとしていられない。 「一目でも会えて良かったよ。お前、病院に行け」 「なに、会った早々」 「人には健康管理、うるさく言うじゃないか。人よりまず自分。真理恵にもあまり心配かけるな」 「……分かった。休めそうなら病院に行ってくる」  哲平がすかさず口を挟む。 「常務命令。来週は一週間休むこと」 「はぁ? なにそれ」 「今は仕事の谷間だ、時期的にちょうどいい。お前がいなくても誰も困らないよ」 「今日充分休んだよ」 「明日はまさなりさんとこでホームパーティーだ。そして一週間休み。病院にも行く。ほらな、結構お前も忙しい」 「なに言ってんだか」  和愛も哲を抱いてそばに座った。哲平が哲を引き受ける。ジェイが花枝を抱いてきた。 「お願い、お義父さん、お休みして! お義父さんが元気じゃないと私……」 「おい、泣くな! 分かった、月曜は休むから。それで病院に行ってくる。それならいいだろ?」 「一週間。もうお前の休暇願出してあるし受理してある。人事にも届いてるから休み! この話も終わり!」 「ありがとう、哲平さん!」  真理恵とジェイが同時に叫んだ。花も諦めたような顔をした。 「まったく……どうってこと無いのに」  再度、ゆっくり休むことを言い含めて、蓮とジェイは帰った。 「大丈夫だよね?」 「月曜、検査の結果を聞こうな。数値はまだはっきり出ないだろうが」 「うん! ……今日は特に顔色悪かったね」 「あいつの強情っ張りにも困ったもんだ……哲平がそばにいて良かったよ、本当に」  職場でもプライベートでもそばにいる。それが心強い。  
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