久々の三途川家

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久々の三途川家

   洋一から連絡があって、二人して三途川本家を訪ねたのは翌週だった。 「親父っさんが倒れたって!?」  電話では洋一が動転していて要領を得なかったから、蓮は玄関を入ってすぐに怒鳴るようにテルに聞いた。 「え?」  一瞬驚いたような顔を見せたテルがなにか言おうとするのに被せるように、奥から大声が聞こえた。 「入ってもらえ! 大将、ここだ!」  テルが案内するより早く蓮が歩く。奥に行くと、親父っさんが足を投げ出して座っていた。 「倒れたって、誰からの知らせだい?」 「誰から、って」 「起きてて大丈夫なの!?」  花のことがあったからジェイも慌てている。 「大丈夫も何も」 「だって洋一さんが」  店の電話を取ったのはジェイだ。忙しくて携帯では繋がらなかったから店にかけてきたのだろう。だから店を閉めて大急ぎで来た。 「洋一!」 「はい! あ、……」 「あ、じゃねぇ! お前大将になに言ったんだ!」 「親父っさんが倒れたって……すみません、その後ごたごたしたんで連絡したこと忘れてました!」 「ばかやろうっ! 大将もジェイもびっくりしてるじゃねぇか!」  洋一が散々怒られている最中に千津子が入って来た。 「ちょいと! 先に大将たちに説明したらどうだい! ごめんよ、2人とも。ウチの唐変木がね、庭でひっくり返ったんだよ。やだねぇ、年取ると足元が怪しくなって」 「千津!」 「お茶を持ってくるよ。本当に申し訳なかったね」  女将さんはやれやれ、と奥に入って行った。 「足元って、その足……」  親父っさんの足首はぐるっと包帯で包まれている。 「面目ねぇ。木の根っこに足が引っかかってな、すっ転んじまったんだよ」  親父っさんの顔が申し訳なさそうな顔になっている。蓮もジェイもほっとし過ぎて出された座布団にすとんと腰を下ろしてしまった。 「じゃ、体はなんともないんですね?」 「おぅ、この通りだ」  年は取っても親父っさんの体には気迫がみなぎっている。 「良かった……俺、どうしようって」 「ジェイ、泣かねぇでくれ、大丈夫だから。洋一っ、ジェイが泣いちまったじゃねぇか!」 「すみませんっ」  けれど連絡をくれたのは有難い。 「いいんです、洋一さんを責めないでください。どんなことでも知らせてほしいですから。じゃ、捻挫ですか?」  親父っさんは頷いた。 「参ったよ。佐野に診てもらったんだが、年だから一ヶ月ほどはかかるだろうと言われちまった」 「それで済むなら良かったですよ。捻挫は後々響きます。大事にしないと」  千津子がお茶を持ってきた。ジェイには相変わらず牛乳だ。 「本当に済まなかったねぇ。店、閉めてきたのかい?」 「ええ。親父っさんの方が大事ですから」  感激した親父っさんが重ねて謝るからやっとジェイの涙が引いた。 「テルさん、なにかあったら知らせてね。洋一さんもありがとう!」 「いえっ、すみませんでしたっ」  
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