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ちょうど二年前②
後日、母から聞かされた。
星乃は夏のインフルエンザにかかり、脱水症状を起こしかけていたらしい。親達が旅行から戻り異変に気づき、そのまま夜間病院へ連れて行ったとのこと。もう一泊することになっていたらと考えると怖くなる。
病院へ行ったのは、星乃が俺に電話をかけてきてから、じつに五時間もたっていた。
母からは「なんであんたが近くにいて、こうなっちゃうのよ」と、呆れたように言われた。
恋人との付き合い方にも呆れていただけに、今回の件は愚かしい、と嘆いた。次いで「星乃ちゃん、彼女と一緒にいる翔吾には頼れなかったんだねぇ」と言った。
星乃は、電話のことを誰にも言わずいたようだ。母の言う通り、ほんと愚かしい。
そんな愚かな俺達の交際は冬を待たずに幕を降ろした。密度が濃すぎたせいで、外部からの孤立が通常生活に支障をきたしたのが一つの原因でもあった。一般的な普通ではないと気づけたから、この別れは互いにとって正解だったと今でも思う。
あの件以来、俺は特定の彼女を作ることはなかったが、星乃と連絡をとることもなかった。俺一人が気にしているだけで、もしかすると星乃にとっては一つの過去だったのかもしれない。そう思うことはしばしばあった。
だから、今日俺がドタキャンされたことはまさに幸運だったと思う。星乃のピンチに、また参上できませんじゃ格好がつかないからな。
星乃との関係を正常化させたい。今夜はいろいろ話そう。あの日を謝ろう。この機会は天からの贈り物だと思った。
あと20分ほどで目的地だ。
街を流れるヘッドライトが眩しくて、俺は時折目を細めた。過去を振り返る自分を悟られたくなく振る舞うように。
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