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 僕は理帆の顔を見た。 「また、月斗と自分を比較してたんでしょ? 比べなくていいんだって」 「……でも、あのポジティブ志向がオレは羨ましいよ」 「みんながあいつみたいに無茶してたら世の中メチャクチャだよ」  理帆は笑った。 「でもね、月斗はその青森のセレクションがもし落ちたらと思ったら怖かったらしくてね、受けに入ったことは郁也には言うなって口止めされてたんだよ。アイツもそういうことは気にしてるんだよ」 「意外だな、あの自信過剰もそういうの気にするのか」 「郁也が文学新人賞の選考に残ってるって結構刺激になってたみたいだよ。負けてられないって思ったりするんじゃないかな」  そんな話を聞いたことなかった。もしそう思っていたとしても、月斗がそんなことを僕に言うはずはないよなとも思った。 「あと……この前、二人で何か話したんでしょ? その高校からは少し前から声がかかってたみたいだけど、郁也と話して、月斗はそれでまた動き出す決意できたみたいだよ。何を言ったの?」 「そんな……たいしたこと話してないけどな」 「そうなの?」 「そうだな」  実際、理帆を何か感動させられるような会話を月斗としたわけではない。しかし、理帆は何か勘違いでもしているのか上目遣いで「いいなぁ」と言った。 「二人がどんな会話したかは知らないけど、月斗はね、郁也にカッコ悪いところ見せたくないらしいよ」 「なんだよそれ……。あー……だから、この前、月斗が練習していないときに理帆は『バイトで残業してる』とか嘘を……」 「あ、そうそう。ごめんね。理由は知ってたんだけど、喋っちゃうわけにはいかないしさ」  理帆は両手の掌を合わせて僕に謝る仕草をした。 「いや、いいんだよ。オレが月斗だったらやっぱりそんなこと言ってた気はするし。うん……、それにしてもさ、結局、結果を出す月斗はすごいよ」  どういう縁で青森の高校へのセレクションを受けることができたのかは知らない。そこでしっかり合格をし、月斗はまたサッカーで進む道を見つけ出したのだ。  なんだか全身の力が抜けた。このまま座り込みたい気分だった。 「月斗は月斗、郁也は郁也だよ」  隣の理帆が僕を見ながら言った。
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