恋慕編

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その頃、宮殿では出入り口で検問が行われ、素性の分かったものから外へと出されていた。 侵入者が見つからない。 天王寺を捕らえたことにより、アデルは陸を取り返しに来た者だと推測していた。けれど、天王寺以外の者は誰一人として見つけられない。 (どこにいる、どこに隠れている) 苛立ちと焦りだけが募り、来客に部外者の侵入者が出たことを説明し、検問を行うことを承諾してもらい、アデルは足早に自室へと急いだ。 陸を奪われる。そう考えたら、居てもたってもいられなくなった。サンディスに検問を託し、自身は早々に離れへと急ぐ。 バンッ と勢いよく扉を開けば、自身のベッドに姫木は無防備な姿で寝ていた。 「……陸、よかった」 もしかしたら、消えているかもしれない。そう不安を抱えながらここまで来たので、そこに姫木がいたことに、アデルはほっと息を吐く。 扉を閉め、明かりの消えた部屋を進み、アデルはベッドへと腰かけると、そっと姫木の服をはだけさせた。 白くて、柔らかい肌が月明かりに照らされる。それはとても欲情的で、先ほど汚した匂いが纏わりついていた。 小さな唇から吐き出される規則正しい寝息は、とても甘く柔らかく、心地いい。 アデルは眠っている姫木に、覆いかぶさるように身体を重ね、首筋に舌を這わす。 「ふっ、甘いな。陸はどこも甘い」 強く吸い上げれば、首筋に赤い痣が残った。まるで自分の所有物のようについた痣に、アデルは高揚する。欲しい、欲しいと、全身が震えるほどの欲が漲る。 それから、肩、二の腕、鎖骨、胸、腹、脇腹と、徐々に舌を這わせ下りていくアデルは、各所に痣を残す。 どれほど姫木を味わったのだろう、下肢に触れた時、ピクッと身体が反応を示した。眠っていても感じるのかと、笑みが零れる。 ピチャ、と湿った音が耳に流れてくる。 身体が熱い、そわそわする感覚がし、快楽を引きずり出されるようなもどかしさがした。 「……ぁ、ぁっ」 ビクンと小さく痙攣した身体で目を覚ました俺は、ゆっくりと目を開けて信じられない光景を目の当たりにした。 裸にされている俺の下肢に頭を埋めて、アデルが硬くなったソコを口に咥えていたからだ。 両足を軽く立たせて、ジュルっと卑猥な音と共に、俺自身を口腔内でねっとりと舌を絡ませ、後ろに指を挿入していた。 「あッ、ヤダっ!」 完全に目が覚めて、俺は腰を引いてアデルの愛撫から逃れる。 「目が覚めたか」 俺が目を覚ますと、アデルはそこから口を外し、顔を近づけてきた。 部屋が違う。いつもの見慣れた部屋ではないことに、俺の瞳は震え、どこを見ても天王寺の姿がないことに不安が募る。 「天王寺はどうしたんだよ」 「お前次第だと言っただろう」 冷たい、温度のない声が浴びせられる。俺は震える声を何とか抑え込んで、身を乗り出した。 「お前の言うとおりにしただろう」 天王寺を助けたければ、誘えと、咥えろと命令し、俺はそれに従った。それなのに天王寺に危害を加えていれば許さないと、俺は強く強くアデルを睨む。 「お前に選択肢を与える」 「選択肢?」 「選択は2つ。お前はどちらかを選べばいい」 ただそれだけのことだと、更に温度を無くした声を吐かれた。と同時に、俺の肌に手を滑らせて、どこか楽しそうに薄く笑みを浮かべられた。
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