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普段は車が通る道路の両側に並ぶ露店を冷やかしながら、みんなでぞろぞろと雑踏を歩く。
りんご飴、じゃがバター、たこ焼き、かき氷…。
「かき氷、まだ早くね?」
「いや、おれはいくぜー」
「やっぱチョコバナナっしょ」
みんなでわいわい言いながら、それぞれ好きな物を買って食べ歩いている。
かき氷を買った邦貴が「頭キーンとするー!」と顔を顰めていた。オレはフランクフルトを齧りながら、一応笑顔でそんな邦貴を見ていた。
日が暮れてきて、露店の明かりがお祭りの雰囲気を盛り上げる。
キラキラとカラフルに光るブレスレットやカチューシャの店や、金魚すくいの水がLEDの強い光に反射していた。
「あ、オレお好み焼き食うー」
今日の晩飯はコレにしよう。
「じゃ、俺も食おっかな」
「あ、桐人も?」
横に並んだ桐人を見上げた。
「おー?お好み焼き大人気じゃん。おれも並ぼーっと」
「邦貴さっきたこ焼き食ってなかった?」
オレの後ろに並んだ邦貴を振り返って言った。
「まだ全然食えまーす」
いえーい、と腕を上げた邦貴を見ながら「あーあ」と思った。
ちょっと、桐人と2人で喋れるかもって思ったのに。
鉄板の上で、手早く次々と広島風お好み焼きを焼いていく手元を見るとはなしに見ていると、華やかな団体が近付いてきた。
「遠野くん、お祭りとか来るんだー、意外ー」
派手な浴衣の女の子たち。
「あ、森下くんと黒田くんも。最近そのへん仲良さそーだよね。なんか不思議ー」
きゃーっと騒ぐ高い声。メイクが濃くて正直誰だか分からない。
「女のコは学校帰りそのまま、じゃないんだね」
桐人が浴衣女子の方をチラリと流し見ながら言うと、みんな一瞬黙った。
「…そりゃ、お祭りは浴衣着なきゃ、ねー」
中の1人、大きな朝顔の柄の浴衣のコが、桐人を見上げながら応えた。泣きぼくろがあるハデな顔立ち。心なしか頬が赤く見えるけどメイクなのかな。
「はい、いらっしゃい。次のお客さん、いくつ?」
露店のいかついお兄さんに声をかけられてびくっとした。
「あー、オレ1つで」
いつの間にか自分の番になってて、わたわたしながらサイフを出した。
なんか、胸の辺りがざわざわしてる。
ざわざわ、てゆーかイライラ?
代金を渡して、お好み焼きの入った白い袋を受け取った。料金表には「袋代込み」と書いてあった。まあ、お好み焼きを袋無しで渡されても困る。
オレの次の順番だった桐人は、お好み焼きを受け取った後もまだ女の子に囲まれていた。その後ろの邦貴も何気ににこやかに喋っている。
オレは他のみんなのいる方へ向かった。
「遠野、前はあんなに女子に声かけられたりしなかったんだけどさ」
すいと寄ってきた高橋がボソッと言う。
「森下とか黒田とかといるようになって増えてきたんだよなあ。遠野、森下と話してる時表情が柔らかくなるから、前より話しかけやすい気がするみたい」
ふふっと笑った高橋は、物静かな感じのやつでオレの友達にはいないタイプだ。
「そうなの?」
「そうだよ。気付いてなかった?って、ああそうか。森下にとっては遠野はいつもあんな感じだもんね」
一度視線を落とした高橋が、桐人たちの方を見た。つられてオレも浴衣女子たちに囲まれてる桐人と邦貴の方を見る。
またチクリと胸が痛んだ。
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