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3
桐人の広い肩に必死でしがみついてキスを繰り返した。
身体が奥からどんどん熱くなってくる。
やばい…身体中じんじんする…。
息が上がって、体温も上がって、涙が滲んでくる。
離れた唇が恋しくて目を開けると、潤んだ視界に微笑む桐人が映った。
「お前、やっぱ可愛いな。…俺おかしくなりそう」
覗き込みながらそんな事を言われたら、こっちこそおかしくなる。
「…ね、桐人…、キスだけ、とか、無理…」
こんな事を言うのは恥ずかしい。
恥ずかしいけどもう後戻りできない。
「…知希、お前それ…、意味解ってる…?」
心配と、欲の混ざった目をした桐人が言う。
「わ、わかってる、つもり…。…桐人は…?」
桐人は、ここで止められるの?と、目で問うてみる。
オレを見返したメガネの奥の涼しげな目が、色っぽく笑った。
「…抱いていいの…?」
少し掠れた声で訊かれて、うん、と頷いた。
「じゃ、俺の部屋、おいで」
手を引かれて立ち上がった。
そのまま、ぎゅうと抱きしめられた。
自分の心臓の音か、桐人のそれか分からなくなる。
でもお互いの身体の興奮具合ははっきり分かった。
初めて入れてもらった桐人の部屋だけど、何を見る余裕もない。
少し大きめのベッドに押し倒されて、もう覆い被さってくる桐人しか見えない。
「…なんか、夢なんじゃねぇかなって、思ってきた…」
「それは…、オレも思ってる…」
笑いながらキスをする。
桐人の体重を受け止めて、身動きできないのに嬉しい。
邦貴に捕まった時は、ただただ怖かった。
思い出してぞわりとして桐人にしがみついた。
「…どうした?」
キスの合間に訊かれる。
「…なんでも…」
ない、まで言う前に再び唇を塞がれた。
この前まで、誰かの箸が触れたものは口にしない、というルールを守ってきたのに、今は桐人と舌を絡めてる。
荒い息が混ざって、飲み込みきれない唾液が口の端を溢れていった。
キスをしながら、桐人の指がオレの制服のネクタイを解いていく。
シュルシュルと衣擦れの音がして首元が透く。
桐人の唇が、頬に、顎に触れる。
優しく啄まれて少しくすぐったい。
身体が捩れて晒した首に口付けられて息が止まった。
ぶわっと体温が上がる。
ここから、別の扉が開く。
桐人のシャツを掴んで目を開けた。
オレを見下ろす桐人は、いつの間にかメガネを外していた。
「…桐人、どれぐらい見えるの?」
「近けりゃ見える。だからこの距離なら全然問題ない」
そう言って、オレに鼻先を擦り寄せてくる。
「逆に見えないっしょ、それ」
「だな」
くすくす笑いながらオレの頬に口付けて、大きな手で髪を梳く。
「俺も、もちろん初めてだから、どうなるか分かんねぇけど、いい?」
「オレは…、桐人になら何されてもいい」
格好いいなあと思いながら、うっとりと見上げて言うと、桐人がふいと視線を外した。
それからふぅっと大きく息を吐いて、オレの目を覗き込んだ。
「…お前、ほんと可愛くてタチ悪いな」
「え…?」
「自覚なしか。まあいいけど」
少し慣れてきたキスに応じていると、いつの間にかシャツのボタンが外されていた。
オレは手を伸ばして桐人のネクタイを解いた。ボタンは手が震えて外せない。
オレの頬に顎に唇にキスの雨を降らせながら、器用に片手でボタンを外してシャツをばさりと脱いだ桐人が、あまりに格好よくて眩暈がした。
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