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 桐人の広い肩に必死でしがみついてキスを繰り返した。  身体が奥からどんどん熱くなってくる。  やばい…身体中じんじんする…。  息が上がって、体温も上がって、涙が滲んでくる。  離れた唇が恋しくて目を開けると、潤んだ視界に微笑む桐人が映った。 「お前、やっぱ可愛いな。…俺おかしくなりそう」    覗き込みながらそんな事を言われたら、こっちこそおかしくなる。 「…ね、桐人…、キスだけ、とか、無理…」  こんな事を言うのは恥ずかしい。  恥ずかしいけどもう後戻りできない。 「…知希、お前それ…、意味解ってる…?」  心配と、欲の混ざった目をした桐人が言う。 「わ、わかってる、つもり…。…桐人は…?」    桐人は、ここで止められるの?と、目で問うてみる。  オレを見返したメガネの奥の涼しげな目が、色っぽく笑った。 「…抱いていいの…?」    少し掠れた声で訊かれて、うん、と頷いた。 「じゃ、俺の部屋、おいで」  手を引かれて立ち上がった。  そのまま、ぎゅうと抱きしめられた。  自分の心臓の音か、桐人のそれか分からなくなる。  でもお互いの身体の興奮具合ははっきり分かった。  初めて入れてもらった桐人の部屋だけど、何を見る余裕もない。  少し大きめのベッドに押し倒されて、もう覆い被さってくる桐人しか見えない。 「…なんか、夢なんじゃねぇかなって、思ってきた…」 「それは…、オレも思ってる…」  笑いながらキスをする。  桐人の体重を受け止めて、身動きできないのに嬉しい。  邦貴に捕まった時は、ただただ怖かった。  思い出してぞわりとして桐人にしがみついた。 「…どうした?」  キスの合間に訊かれる。 「…なんでも…」  ない、まで言う前に再び唇を塞がれた。  この前まで、誰かの箸が触れたものは口にしない、というルールを守ってきたのに、今は桐人と舌を絡めてる。  荒い息が混ざって、飲み込みきれない唾液が口の端を溢れていった。  キスをしながら、桐人の指がオレの制服のネクタイを解いていく。  シュルシュルと衣擦れの音がして首元が透く。  桐人の唇が、頬に、顎に触れる。  優しく啄まれて少しくすぐったい。  身体が捩れて晒した首に口付けられて息が止まった。  ぶわっと体温が上がる。  ここから、別の扉が開く。  桐人のシャツを掴んで目を開けた。  オレを見下ろす桐人は、いつの間にかメガネを外していた。 「…桐人、どれぐらい見えるの?」 「近けりゃ見える。だからこの距離なら全然問題ない」  そう言って、オレに鼻先を擦り寄せてくる。 「逆に見えないっしょ、それ」 「だな」    くすくす笑いながらオレの頬に口付けて、大きな手で髪を梳く。 「俺も、もちろん初めてだから、どうなるか分かんねぇけど、いい?」 「オレは…、桐人になら何されてもいい」  格好いいなあと思いながら、うっとりと見上げて言うと、桐人がふいと視線を外した。  それからふぅっと大きく息を吐いて、オレの目を覗き込んだ。 「…お前、ほんと可愛くてタチ悪いな」 「え…?」 「自覚なしか。まあいいけど」  少し慣れてきたキスに応じていると、いつの間にかシャツのボタンが外されていた。  オレは手を伸ばして桐人のネクタイを解いた。ボタンは手が震えて外せない。  オレの頬に顎に唇にキスの雨を降らせながら、器用に片手でボタンを外してシャツをばさりと脱いだ桐人が、あまりに格好よくて眩暈がした。
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