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 そうは言っても、朝になると「もう朝?」と思ってしまい、目覚ましのスヌーズを2回も3回も繰り返してやっと起きて、バタバタと準備をして家を出た。  でも皿を洗えたから今朝も満点だ、と自分で自分を褒めてやった。  でも。 「昼飯代持ってくるの忘れたー」 「うわマジか、知希」  学校に着いて、教室に滑り込んだところで予鈴が鳴って、という典型的な落ち着きないキャラの朝の光景をなぞってしまい、チラリと見た桐人に笑われて、あちゃーと思ってたところにこれだ。  サイフの中には10円玉が数枚。小学生か。いや、今時の小学生はもっと持ってんのか?それとも電子マネーなのかな。 「貸そうか?」  オレの淋しいサイフを覗きながら桐人が言った。 「ううっ。嬉しいけど、友達と金の貸し借りはしない主義なんだよー」 「それ、絶対曲げないよな、知希」  付き合いの長い友達は、みんなオレのその主義を知っているのでサイフを出そうとしない。    母子家庭で育っているせいか、お金に対する考え方がどうしても厳しくなる。昼食代の数百円を1日借りるぐらい大した事ないだろうと、思うには思うけど、それでもやっぱり抵抗がある。 「ふーん…」  4時限目開始のチャイムが鳴って授業が始まった。  昼飯抜きかー、と思うと余計に腹がへる。  しょうがない。水でも飲んでごまかそう。  たまにやっちゃうんだよなあ。最近そわそわしてるのは自覚があったのに。  もうちょっとどうにか、そう、桐人に笑われないくらいには落ち着きたい。  そんな事を考えつつ、きゅるきゅる鳴る腹を抱えながら授業を聞いていた。  
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