前書き・解説

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前書き・解説

 お笑い 歌舞伎「猛牛巴御前」 (おわらい かぶき もうぎゅうともえごぜん) 前書き 表記について 前書き  歌舞伎の脚本を書いてみました。 木曽義仲の家人「巴御前」を主人公に、落語、野球日本シリーズ「近鉄対広島」などを盛り込みました。ほとんどお笑いに終始しておりますので、あまり歌舞伎をご覧にならない方でも楽しめるようになったのではないかと思います。  脚本を書くにあたっては、真山青果に代表される新作歌舞伎の台詞劇を参考にしました。ですが、出来上がってみると伝統的な歌舞伎の趣きが強くなりました。  この脚本では、お笑いの要素を取り入れてあります。目指したのは「お笑い」であり、単なる「悪ふざけ」にならないように心がけたつもりです。お笑いのネタには落語をそっくりそのまま使わせていただきました。  プロ野球日本シリーズについて記します。日本シリーズはセリーグとパリーグの優勝チームが戦って日本一を決める試合です。七試合で先に四勝した方が日本一になります。  1979年はセリーグは広島東洋カープ、パリーグは近鉄バファローズが優勝し、この二チームで日本シリーズが行われました。  広島東洋カープは、赤いヘルメットで赤ヘル軍団と呼ばれています。カープは「鯉」のことです。近鉄バファローズは「いてまえ打線」と言われ、バファローズは「猛牛」のことです。  このシリーズは、第六戦まで三勝三敗で最終第七戦を迎えます。試合は広島が四対三とリードして9回裏に入りました。ここで近鉄が無死満塁のチャンス、ヒットが出れば近鉄の逆転サヨナラ勝ちです。マウンドにいるのは広島のリリーフ江夏。ここで、とてつもないドラマが待っていました。  これは「江夏の二十一球」として、野球ファンにはよく知られた話です。とはいえ、私の生まれる前のことなので、この試合は実際には見ていません。これを書くにあたっては、当時、見ていた方にお話を伺いました。その方の話では、仕事で店番しながらテレビを観ていたので、よく分からなかったが、最後の場面は、試合が終わったとは思えず、まだこの続きがあるのではないかと思ったそうです。  なお、「江夏の二十一球」は、ユーチューブ動画にもありますので、興味のある方はご覧ください。 ・近鉄バファローズはのちに球団経営が替り、現在の楽天イーグルスになりました。 ・このシリーズでは近鉄は本拠地の球場が使えず、南海ホークス(現ソフトバンク)の本拠地である大阪球場を使用しました。 ・投稿後に、行間、文字の配列などを修正する場合がありますので、ご了承ください。 【参考】 落語 鯉盗人 落語 ラブレター(柳亭痴楽) 1979年 日本シリーズ 近鉄対広島 表記について 1 脚本では台詞が二行にわたる場合、二行目は一字下げる決まりになっている。だが、投稿サイトによっては字下げが反映されないことがあるので、二行目は行頭から書いた。 「〇」で舞台設定を表し、「・」はト書き、()は演技、所作である。脚本に不慣れなのでト書きと所作の区別がつかない部分もある。ト書きや演技の描写の前後はできるだけ改行した。また、横書きでも読みやすくするため、台詞と台詞の間には「>」を入れた。 2 歌舞伎には下座音楽として義太夫、長唄、河東節などが付けられているが、この脚本では台詞だけで音楽、語りはない。 3 野球用語は概ね日本語に直したが、スクイズ、バットなどはそのまま用いた。 4 歌舞伎には時代物と世話物がある。時代物は江戸時代からみた歴史劇で、平安時代や鎌倉時代を舞台にしている。世話物とは江戸時代の同時代の事件、出来事などを扱った芝居のことをいう。ただし、時代物の中に、江戸時代の習俗が描かれることがある。たとえば、助六由縁江戸桜(助六)は、鎌倉時代の話で、助六実は曽我五郎という設定なので時代物なのだが、江戸時代の吉原が舞台で、その点では世話物ともいえる。 5 用語解説 ・令外官「りょうげのかん」 律令に定められていない臨時の官職。征夷大将軍、検非違使、参議、中納言などがある。 ・七三「しちさん」 花道の舞台に近いところ。 ・注進「ちゅうしん」 伝令、戦場から状況を伝えにくる役。四天と呼ばれる裾の割れた衣装を着て、裾には馬連という房を付けている。 ・定式幕「じょうしきまく」 黒、萌黄、柿色の三色の幕。 6 幾つかの箇所に、著名な歌舞伎作品を取り込んであります。 ・助六由縁江戸桜「すけろくゆかりのえどざくら」~白酒売りと弁当売りの件。白酒売りは曽我兄弟の兄の十郎、弁当売りは弟の五郎です。 ・勧進帳「かんじんちょう」~巴御前の手紙を読む件。 ・義経千本桜「よしつねせんぼんざくら」~巴御前と薙刀の名前をあべこべにする件。 その他 「検非違使 けびいし」「式部省 しきぶしょう」 「蹴球 しゅうきゅう」「蹴鞠 けまり」 「殿上人 でんじょうびと」「公卿 くぎょう」 「薙刀 なぎなた」    〇 〇 〇     歌舞伎「猛牛巴御前」 【解説】  歌舞伎「猛牛巴御前」(もうぎゅうともえごぜん)は、平安時代末期、平家打倒に立ち上がった木曽義仲の家人巴御前の活躍を描いた作品です。第一幕「鯉料理屋」、第二幕「いてまえ巴御前」があります。  平家追討のために挙兵した木曽義仲は北陸道から攻め上がり、倶利伽羅峠の戦いで牛の角に松明を括り付けて平家陣に襲いかかり勝利した。その後、都に上ったが配下の武将が乱暴狼藉を働くなどして後白河法皇と不仲になった。源頼朝は義経を義仲征討に送り込み、義仲は粟津の戦いで敗れ戦死した。巴御前は戦場から落ち延びたが、鎌倉方の和田義盛によって捕らえられた。
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